身代みがわ)” の例文
三毛子の身代みがわりになるのなら苦情もないが、あの苦しみを受けなくては死ぬ事が出来ないのなら、誰のためでも死にたくはない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ビール樽は、そのころから、お店の周囲をうろついてたんだわ。あいつ、百円紙幣に釣られて、あんたの身代みがわりになったのね」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さきに身代みがわりの自分の首に引導いんどうわたして、都田川みやこだがわ水葬礼すいそうれいをおこなった快侠僧かいきょうそう、なんとその猛闘もうとうぶりの男々おおしさよ! 生命力せいめいりょく絶倫ぜつりんなことよ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突然、目をつりあげて、その平七が横から飛びつくと、お雪の放した有朋の靴へ、身代みがわりのように武者ぶりついた。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
わたしはその嬉しさの余り、いつまでも独り笑いながら、同じ言葉を繰返していました。——「甚内の身代みがわりに首を打たれる。甚内の身代りに首を打たれる。………」
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みことのお身代みがわりとして入水にゅうすいされたときひめのお心持こころもちはどんなであったろう……。』祠前しぜんぬかづいてむかししのときに、わたくし両眼りょうがんからはあつなみだがとめどなくながちるのでした。
はずかしながら、おまえがなくてはこのなかに、だれおもってきようやら、おまえ一人ひとりを、むねにひそめてたあたし。あたしにねというのなら、たったいまでも、身代みがわりにもなりましょう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「そうなると、例の狐はその身代みがわりなんですね」
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして、自身がその身代みがわりになり、桑名くわな護送ごそうされるまえに、どこかへ落としてしまったとおっしゃる。だのに、居士はそれが父の勝頼かつよりであるとは決していいきらない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「老先生、しばらくお待ちくださいませ。……もう一言ひとことうかがいますが、居士こじ身代みがわりとなって逃がしたとおっしゃるその僧は、いったいどこへいったのでござりましょうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)