踏石ふみいし)” の例文
六月に氷をみる事江戸の目には最珍いとめづらしければ立よりて熟視よくみれば、深さ五寸ばかりの箱に水をいれその中にちひさ踏石ふみいしほどの雪の氷をおきけり。
階段の踏石ふみいししりに冷たく、二人は近来まれな空腹を感じる。欠伸あくびをしたり、心窩みぞおち握拳にぎりこぶしで叩いたりして、その激しさを訴える。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
作松が怒鳴どなつてゐるのは、中庭にそむいて、庭木戸に面した、二番目娘あやめの部屋の前、踏石ふみいしの上に立つたまゝ、縁側へ手を突いて、部屋の中を覗く恰好になつたまゝ
ところが日本の家屋になると縁側えんがわというものがありまして、その踏石ふみいしには庭下駄にわげたがある。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その内に彼等の旅籠はたごの庭には、もう百日紅ひゃくじつこうの花が散って、踏石ふみいしに落ちる日の光も次第に弱くなり始めた。二人は苦しい焦燥の中に、三年以前返り打に遇った左近の祥月命日しょうつきめいにちを迎えた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そっと金のかんざしを質に入れて、その金で親類の家をかたっぱしから探して、い花の種を買って植えたが、数月の中に、家の入口、踏石ふみいし垣根かきね、便所にかけて花でない所はなくなった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「上の雪隱せんちと言ひ、風呂場の踏石ふみいしと言ひ、この家にはたゝのあるもんが多い。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
寒竹の垣根つづきの細道を、寒竹の竹の子を抜きながらゆくと何処でか藪鶯やぶうぐいすが鳴いている。カラカラと、すべりのいい門の戸をあけると、踏石ふみいしだけ残して、いろとりどりな松葉牡丹ぼたんが一面。
庭先にわさきりようとして、やみのなかにそれと見えた、沓脱石くつぬぎいしへ足をかけると、こはいかに、それは庭の踏石ふみいしではなくて、ふわりとしたものが、足のうらにやわらかくグラついたかと思うと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六月に氷をみる事江戸の目には最珍いとめづらしければ立よりて熟視よくみれば、深さ五寸ばかりの箱に水をいれその中にちひさ踏石ふみいしほどの雪の氷をおきけり。
向柳原の八五郎のところを踏石ふみいしに、お品が平次に報告して來たのです。
踏石ふみいし小笹こざさをあしらつたのは、詩人室生犀星むろふさいせいの家。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と、大きな踏石ふみいしの前を指さした。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春にいたれば寒気地中より氷結いてあがる。その力いしずへをあげてえんそらし、あるひは踏石ふみいしをも持あぐる。冬はいかほどかんずるともかゝる事なし。さればこそ雪も春はこほりそりをもつかふなれ。
春にいたれば寒気地中より氷結いてあがる。その力いしずへをあげてえんそらし、あるひは踏石ふみいしをも持あぐる。冬はいかほどかんずるともかゝる事なし。さればこそ雪も春はこほりそりをもつかふなれ。