ひけ)” の例文
ヴァイオリン弾きは、かれを横目で見ながら、決してこの男などにひけをとらないという暗示を与えるようにツケツケ叫ぶのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それはタイプライタアを叩く事で、この道にかけての陛下の手際は、倫敦ロンドンで名うてのタイピストに比べても決してひけは取られない。
比較的に気の弱いお屋敷の子は荒々しい町っ子に混ってひけを取らないで遊ぶことは出来なかったが彼らは物珍しがって私をばちやほやする。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
マーキュ さゝ、足下おぬしはイタリーでれにもひけらぬ易怒男おこりむしぢゃ、ぢきおこるやうに仕向しむけられる、仕向しむけらるればすぐおこる。
議論にかけては威命天下に響ける夫中将にすらひけを取らねど、中将のいたるところ友を作りう人ごとに慕わるるに引きかえて、愛なき身には味方なく
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
此方は遇然にもそろつた初段級の腕達者ぞろひであつたから、彼等にひけをとつた験はなかつた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
やくざのほうではひけは取らないが、その連中、気障きざで薄っぺらで鼻持ちがならない。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
めえも本所の旦那の子分、己も子分だ、旦那が表へ出られなくっているのに子分が本所へ来て恥辱けじめを食って、身を投げるとはどういう訳だ、旦那は子分が喧嘩でひけを取っては見てはいられねえ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伊太利イタリーのヴエニスには美しい女が多い。世界中のどこの都に比べても、美しい女にかけては決してひけを取らない。
鵬斎の着物がこんなに古かつたかどうかは知らないが、あまりひけは取らなかつたに相違なかつた。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それを目の前で見せつけられた犀水氏は、宿に帰つて、一部始終を相宿あひやどの黒田清輝氏と岩村透氏とに話した。二人は仏蘭西仕込しこみの、悪戯いたづらにかけては誰にひけを取らない人達である。
仲間には、高村光雲氏の弟子で、泰雲といつた、蛞蝓なめくぢの好きな男もまじつてゐた。白砂糖にまぶして三十六ぴきまで蛞蝓を鵜呑うのみにしたといふ男で、悪食あくじきにかけては滅多にひとひけは取らなかつた。
星島氏も親孝行にかけては松本氏にひけを取らなかつた。