つつしん)” の例文
はじめは、我身の不束ふつつかばかりと、うらめしいも、口惜くちおしいも、ただつつしんでいましたが、一年二年と経ちますうちに、よくその心が解りました。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
就きましては私への報酬ですが、つつしんで辞退いたします。それはこの事件は、私にとっては極めて不手際の、不快な事件だったからでございます。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また課長殿に物など言懸けられた時は、まず忙わしく席を離れ、仔細しさいらしく小首を傾けてつつしんで承り、承り終ッてさて莞爾にっこり微笑してうやうやしく御返答申上る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
れは亡父ぼうふが存命中大阪で買取かいとっことほか珍重したものと見え、蔵書目録に父の筆をもって、この東涯先生書入の易経十三冊は天下稀有けうの書なり、子孫つつしんで福澤の家におさむべしと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お町はつつしんで袖を合せた。玉あたたかきかんばせやさしい眉の曇ったのは、その黒髪の影である。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆえし非を非と直言したのが侮辱になれば、すべての忠告と云う者は皆君の所謂いわゆる無礼なものだ。若しそれで君が我輩の忠告をいかるのならば、我輩一言もない、つつしんで罪を謝そう。がそうか
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)