蛇目傘じゃのめ)” の例文
胸を反らして空模様を仰ぐ、豆売りのおばあの前を、内端うちばな足取り、もすそを細く、蛇目傘じゃのめをやや前下りに、すらすらと撫肩なでがたの細いは……たしかに。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかもくだんの艶なのが、あまつさえ大概番傘の処を、その浅黄をからめた白い手で、蛇目傘じゃのめと来た。祝儀なしに借りられますか。且つまたこれを
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かげの夫婦は手で抱合うて、かくす死恥旗天蓋てんがいと、蛇目傘じゃのめ開いて肩身をすぼめ、おとせ、あれあれ草葉の露に、青いかすかな蛍火一つ、二つないのは心にかかる。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鉢植でもあろうと思う、細い柳の雨にからんで、細い青々とした、黒塀へ、雪が浮いたように出たんです。袖に添えた紺蛇目傘じゃのめがさっと涼しい、ろくろの音で
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蛇目傘じゃのめを泥に引傾ひっかたげ、楫棒かじぼうおさえぬばかり、泥除どろよけすがって小造こづくりな女が仰向あおむけに母衣ほろのぞく顔の色白々と
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美人たおやめのこの姿は、浅草海苔のりと、洗髪と、おきゃんと、婀娜あだと、(飛んだりねたり。)もちょっと交って、江戸の名物の一つであるが、この露地ばかり蛇目傘じゃのめの下の柳腰は
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
破れた蛇目傘じゃのめで、見すぼらしい半纏はんてんで、意気にやつれた画師さんの細君が、男を寝取った情婦おんなとも言わず、お艶様——本妻が、そのていでは、情婦いろだって工面くめんは悪うございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と察したように低声こごえで言ったのが、なお色めいたが、ちっと蛇目傘じゃのめを傾けた。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくす死恥旗天蓋てんがいに、蛇目傘じゃのめ開いて肩身をすぼめ……
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丈がすらりと高島田で、並ぶと蛇目傘じゃのめの下につい
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)