から)” の例文
兄きはデツクの艫の方にゐまして、舵の台に縛り付けた、小さい水樽のからになつてゐたのに、噛り付いてゐたのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
甚句じんくを歌うものがある。詩を吟ずるものがある。覗機関のぞきからくりの口上を真似る。声色こわいろを遣う。そのうちに、鍋も瓶も次第にからになりそうになった。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それから水兵はからのエツヰを出して猿に見せて、指に指輪を嵌めたり抜いたりする真似をして見せた。猿はそれを見てゐたが、暫くして意外な事をし始めた。
(新字旧仮名) / ジュール・クラルテ(著)
彼れが正氣を取かへしてコップを妻からもぎ取つた時にはもうそれはからになつてゐた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
この声はからになつて居る部屋々々へ響いたが、それつきりに、又た静かになりました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
リンツマンの檀那はもうっくに金を製造所へ持って往って、職人に払ってしまっている。おまけにからの財布を持って町へ帰っているのである。実に骨牌と云うものはとんだ悪い物である。
何もかもからになって、無くなってしまう。9355
召人めしうど 早馬 から騒動——
洞穴の中はからだ※
月世界競争探検 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
手紙の反古を少し掻き退けて見ると、一方の隅には綺麗な漆塗うるしぬりの小箱がいくつもある。開けて見れば、中は皆からである。これは勲章の明箱あきばこであつた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
多分からだらうとは思ひながら、手に取つて見たが、どれにも一滴も残つてゐない。次に棋盤の傍にあるコニヤツクの瓶を手に取つた。これはまだ七八分目程這入つてゐる。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
博士はからになった杯を、黙って児髷ちごまげの子の前に出して酒を注がせて、一口飲んで語り続けた。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
小倉に来てから、始てまとまった一月間の費用を調べることが出来るのである。春を呼んで、米はどうなっているかと問うてみると、丁度米櫃こめびつからになって、跡は明日あした持って来るのだと云う。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)