英邁えいまい)” の例文
とりわけ、近世の歴代中でも、比類なき英邁えいまいな質をもってお生れあったという今上きんじょう後醍醐とすれば、切歯せっしのおちかいも、当然なわけで
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天平期の完成に伴う諸弊害を一掃せられた英邁えいまいな桓武天皇の平安遷都前後にあたってもう一度人心は粛然として真剣の気を取りもどした。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
その上、為世の女(贈従三位為子いし)は後醍醐天皇の側近に侍し、その腹に尊良たかなが親王・宗良むねなが親王のような英邁えいまいの皇子がお生れになっている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
この英邁えいまいな資性にもかかわらずですね——僕は『かかわらず』と言うのですよ——この男は完全に無瑕瑾むきずというわけじゃない。
彼の友勝海舟彼を評して曰く、「先生博学多識、文武を兼ぬ、末技小芸といえども、通暁つうぎょうせざるなし。為人ひととなり英邁えいまい不群ふぐん、一見その偉人たるを知る」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
紀州大納言頼宣卿などが、その英邁えいまいのご気質をもって、何気ないように取り計らって、戦備を施こしてくだされたなら、一番無難で好都合なのだが。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仏教修行のためかつはチベット文字をこしらえるために、天資英邁えいまいの人を撰んで十六人インドへ送ったのでございます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼の英邁えいまい奇行は道具立ての小細工こざいくたるを見て可笑おかしくなった。彼はその知れる限りの最美を尽しておらぬ。むしろ彼の最悪の行儀をなしていたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この可憐かれんな美少年があのカパディア氏からたびたび聞かされていた英邁えいまいなナリン殿下クマールであろうか? この美しい少年が? 私は混乱し切った頭でもう一度不思議そうに私を
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
即ち剛毅英邁えいまいの君であらせられたことがわかるが、同時に激しき熱情と、またその影のごとく深きうれいを伴うておられたことは、万葉集の名歌によっても明らかであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
揃えて、天下の処理にあたるのだと、主人も申しおりました。……上に英邁えいまいなみかどをいただき、新しい世づくりのためにだ、と
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後嵯峨天皇は英邁えいまいであらせられたが、幕府の力で即位されたので、関東に対し御謙遜ごけんそんになっておった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
お年は若くても私共の太子殿下は、印度各王国中で一番英邁えいまいなお方として従前から隠れもない評判のお方でしたが、私が感じましたのは、そうした非常の際の太子殿下のお姿だったのです。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
英邁えいまいではあらせられるが、一面のご気性には、周囲の虚勢、排他、利害などの私心にじょうじられるおそれも多分にないではない。
「——曹将軍の英邁えいまいはかねて知っているが、さりとて、一日でも主とたのんだ人を首として、降服して出る気にはなれん」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、雪さえ降るに、御簾ぎょれんの内、あきらけくはなかったが、笛の座につかれたみ姿の線、おのずからな御威容、さすがはと拝せられ、世上、しきりに新帝の英邁えいまい
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何人なんぴとでも、真実と英邁えいまいと明らかな指導をもって、われに従えと呼号すれば、それが国家の大道と知る以上、こぞって、その指のさす所へいて行きたがっている。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿波二十五万石の蜂須賀重喜しげよし、まだ若くはあるが英邁えいまいな気質、うちに勤王の思想を包み、家士かし研学隆武けんがくりゅうぶにもおこたりがない、——さきには式部を密かに招いて説を聞き
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木曾どのの旗挙はたあげにくみして、大いに志をべようとしたものですが、義仲公は時代の破壊者としては英邁えいまいな人でしたが、新しい時代の建設者ではなかったのです。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身分上、信孝こそ主将たるべきだが、この軍には出おくれて来たし、戦陣に立っても果断、英邁えいまい、ともに欠けていることは、全軍の諸将もみな認めているところだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その点が、英邁えいまいな父の石舟斎とも違っていたし、おいの兵庫の天才肌とも多分に違っていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突っこんだ話をしてみたところ、果たして、ただの土民ではなく、漢室の宗族そうぞく景帝の裔孫えいそんということが分った。しかも英邁えいまいな青年だ。さあ、これから楼桑村の彼の家を訪れよう。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武将としての英邁えいまいを養おうとするもあり、軍学を講義したりまた、源家の起りから義朝の代に至るまでを語って、牛若に、早くから「自分というものは何か」を教え込もうともした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも帝劉禅りゅうぜんは、甚だ英邁えいまいの資でないのである。うごかされやすくまたよく迷う。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「岩国の吉川きっかわ広家公は英邁えいまいの聞えが高い。そちの父祖も、吉川家に随身の者か」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今の僭越せんえつな諫言をゆるして下さい。将軍はやはり稀世の英邁えいまいでいらっしゃる。常々ひそかに、将軍の風姿を見ておるに、いにしえ韓信かんしんなどより百倍もすぐれた人物だと失礼ながら慕っていました。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忠利は英邁えいまいだった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)