肋膜炎ろくまくえん)” の例文
自分は終戦の年の翌年一月三十日に金瓶村から大石田町に移つたが、三月はじめから肋膜炎ろくまくえんにかかり、実に苦しいおもひをした。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
間もなく不量のことで負傷し、肋膜炎ろくまくえんを起してその年の冬、即ち一八九〇年十一月八日、多くの弟子達でしたちしまれながら、パリの宅に長逝ちょうせいした。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
この肋膜炎ろくまくえんからお礼が何程いくら貰えるなんてことはっとも考えていない。画家が絵を描いている時も同じことさ。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
学生時代に肋膜炎ろくまくえんを患ったこともありましたし、その作の「仮面」に拠れば、結核もせられたらしく、それから長年の間、戦闘員でこそなけれ、軍人として戦地に行き、蕃地ばんちにも渡り
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
だが或る朝、院長は、彼に彼が肋膜炎ろくまくえんを再発していることを告げた。そして彼が夜ふけの幻聴のように聞いていた何かの翼の音は彼自身の胸の中から起るものであることを知らされた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
胃酸過多、胃アトニイ、乾性肋膜炎ろくまくえん、神経衰弱、慢性結膜炎、脳疲労、……
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自分で自分に休暇を与え、五週間位の予定でオークランドからシドニイへ遊びに来たのだが、同行のイソベルは歯痛、ファニイは感冒、自分は感冒から肋膜炎ろくまくえん。何のために来たのだか解らぬ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
肋膜炎ろくまくえんを病んだ挙句が、保養にとて来ていたが、可恐おそろし身体からだを気にして、自分で病理学まで研究して、0,などと調合する、朝夕ちょうせき検温気で度をはかる、三度の食事も度量衡はかりで食べるのが、秋の暮方
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肋膜炎ろくまくえんに悩みし病余のたいを養うとて、昨月の末より此地ここに来たれるなるが、かの日、あたかも不動祠にありて図らず浪子をいだき止め、その主人を尋ねあぐみて狼狽ろうばいして来たれる幾に浪子を渡せしより
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
然るに去年文一君が肋膜炎ろくまくえんをやってからは諦めたと見えて
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)