職業しょうばい)” の例文
職業しょうばいなら、何もおかしいこと無いじゃない? 食って行くためなら、どんなことだって、しなくちゃならない時世なんだもの。」
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
何を思ったのか私を掴えても「わては大抵の職業しょうばいの男と関係はあったが文士だけは知らん」と、意味ありげに言うかと思うと
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
だがわたしどもの職業しょうばいでは、技芸わざや、理屈や、熟練のほかに、もっともっと大切なことがあります……いわばトリックのようなもんですがね……
或る精神異常者 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
ははは! 俺達は皆この職業しょうばいに似合ってるさ、まったく似合いの夫婦と云うものだね。さあ居間へお這入り。さあ居間へ!
親戚みよりも無し、職業しょうばいも無し、金も無いの人が、これから他国を彷徨うろついて、末はうなることであろう。何時いつまでも乞食をしているよりほかはあるまい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
職業しょうばい柄懇意にしている筥崎署の大塚警部が飛び乗って来たので、すねに傷持つ私はちょっとドキンとさせられた。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「え……笛吹きという職業しょうばいがあるかどうかわかりませんが、笛のおかげで、こうして長い旅にも困らず過ごしておりますから、やはり、笛吹きでしょうね」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
職業しょうばいの情熱もうしなったように、煙草のけむを輪にふきながら、へんにものかなしい亡命的な小唄を口吟くちずさんでいたり、下水にむかってへどをはいているという始末……。
放浪作家の冒険 (新字新仮名) / 西尾正(著)
これは主に虫仲間からたのまれて、紫蘇しその実やけしの実をひろって来て花ばたけをこしらえたり、かたちのいい石やこけを集めて来て立派なお庭をつくったりする職業しょうばいでした。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「お前の思うとおりをじゃんじゃん答えるんだぞ。ちゃんはどんな職業しょうばいだい?」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
政「流石さすが職業しょうばいとはいいながら、這入りながらお世辞は恐れ入りました」
ああよくでかした感心なと云われて見たいと面白がって、いつになく職業しょうばいに気のはずみを打って居らるるに、もしこの仕事をひとられたらどのように腹を立てらるるか肝癪かんしゃくを起さるるか知れず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ねえ、あなたの職業しょうばいをあててみましょうか」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……もっとも一方から考えてみると有志連中は懲役に行っても職業しょうばいを首にされる心配はない。だから役人連中に泣き付かれない限り調停に立つ必要もない。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「でも、随分変な職業しょうばいもあるもんね。そりゃ、わたしの職業なんかも、随分変なものには違いないけど……」
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「ここのとこ、職業しょうばいが不じるしで、久しくうめえ酒ものめず、あがりかけている始末。そこでおもいだしたのがおぬしだ、金が欲しい、金をもらいに来た」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女は全くの独り暮しで、格別たのしみもない代りに大したくるしみもなく、そうした果敢はかない職業しょうばいにも拘らず、ごく自然な従順さとしとやかさをもっていた。だから誰一人彼女を蔑む者もなかった。
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
野武士という父からの職業しょうばいを、何ものよりいい天職と信じているのだ。泥棒以上な冷血なわざも、喰べて生きるためには、正しいものと、母から教えこまれているに違いない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「小母さん! お隣のお隣は、何を職業しょうばいにしているの?」
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「一体君は、職業しょうばいは何だね」
そうそう、よく喝破かっぱした。坊主という職業しょうばいは、まったく、おせッかいな商売にちがいない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃあ、この沢のよもぎを刈って、もぐさを作るのが職業しょうばいだと、いつかいったのは嘘だな」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃあ、お通様の職業しょうばいは、笛吹きか」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)