繰出くりだ)” の例文
そのうちに大粒の雨が降って来る。いなびかりがする。あわてて雨戸を繰出くりだしている間に、母は蚊帳のなかへ逃げ込んでしまいました。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
露西亜の兵隊が何万満洲へ繰出くりだすうちには、日本ではこれだけ繰出せるとか、あるいは大砲は何門あるとか、兵糧ひょうりょうはどのくらいあるとか
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これはそのお預け人受取うけとりの四藩の人数なのだ。細川藩だけでも、七百名に近い人員を繰出くりだして、万一の変に備えたのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あくる日は数千人の見物と参詣の人が、佐久間家の豪勢な屋敷をとりまき、近所の武家屋敷から、仲間足軽を繰出くりだして、その整理に忙殺されたほどです。
見てるとも知らず源八げんぱちもち取上とりあげ二ツにわつなかあん繰出くりだし、あんあんもちもち両方りやうはう積上つみあげまして、突然とつぜん懐中ふところ突込つツこしばらくムグ/\やつてたが
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何處どこから繰出くりだしたか——まさかへそからではあるまい——かへる胞衣えなのやうなくだをづるりとばして、護謨輪ごむわ附着くツつけたとおもふと、握拳にぎりこぶしあやつつて、ぶツ/\とかぜれる。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
予定の如くに第三陣第四陣と順々に繰出くりだして、盛んに軍容を整えて威武を張った。
その竹の棒へ練付けた羊の毛を巻いて、そうして口でもってだんだん繰出くりだして、よい加減かげんに長くなったところでよりをかけるという具合にして糸をこしらえるのですから太い糸しか出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
讃州さんしゅう丸亀まるがめ京極きょうごく阿波あわ徳島とくしま蜂須賀はちすか、姫路の本多、伊予の松平など、海には兵船をつらね、国境には人数を繰出くりだし、この赤穂領を長城ちょうじょうの壁のように囲んで、やじり砲筒つつを御家中へ向けている
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
段々中二階の方へくから、孝助はいよ/\源次郎に違いなしとやりすごし、戸の隙間すきまから脇腹を狙って、物をも云わず、力に任せて繰出くりだす槍先はあやまたず、プツリッと脾腹ひはらへ掛けて突きとおす。
片手に弓形ゆみなりばちを持って繰出くりだして参りまして釈迦堂の前面へ円く列ぶです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
權三 さあ、繰出くりだせ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
と怒りの声を振立てながら、一歩ひとあし進んで繰出くりだ槍鋒やりさき鋭く突きかける。