絵巻物えまきもの)” の例文
旧字:繪卷物
そのきょくあなたは私の過去を絵巻物えまきもののように、あなたの前に展開してくれとせまった。私はその時心のうちで、始めてあなたを尊敬した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかも実際は小説・御伽草子おとぎぞうし絵巻物えまきもの以上に的確に真相を突留つきとめることは、求めたからとてできることではなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あかいろ貝殻かいがらひとつ、かすかにひびく松風まつかぜひとつがわたくしにとりてどんなにも数多かずおおおも種子たねだったでございましょう! それは丁度ちょうど絵巻物えまきものひろげるように
まきてはひらく絵巻物えまきもの
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
古い絵巻物えまきものなどのにつたわっているのは、木のひつや袋のたぐいであるが、二つとも手製が容易でないうえに、櫃のほうは持つのに二人かかるものが多く
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それ十重とえ二十重はたえかさなりって絵巻物えまきものをくりひろげているところは、まった素晴すばらしいながめで、ツイうっとりととれて、ときつのもわすれてしまくらいでございます。
はてしもなくつづく浅霞あさかすみ……みずそらとのうあたりにほのぼのと遠山とおやまかげ……それはさながら一ぷく絵巻物えまきものをくりひろげたような、じつなんともえぬ絶景ぜっけいでございました。