穴倉あなぐら)” の例文
「御主人はこの中へ降りてみて下さい。中には三万両の小判があるはずだ。穴倉あなぐらはちょうど池の下になっているでしょう」
「吾輩は、司令部の穴倉あなぐらへ、こいつを隠して置こうと思う。司令官に報告しないつもりじゃから、監禁かんきんの点は、君だけの胸に畳んで置いてくれ給え」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
表面に現われた財産も少ないものではないが、先祖以来、穴倉あなぐらに隠して置く金のかたまり莫大ばくだいなものだといううわさ
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
このまちひとは、そのさけ種子たねやしてはならないといって、めずらしく、いいいろに、いいあじに、できたさけをびんにいれて、した穴倉あなぐらなかに、しまってしまいました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、こんどもお百姓ひゃくしょう穴倉あなぐらへ行って、おかあさんに相談そうだんをかけました。おかあさんはわらって
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それより洞中どうちゆう造船所ぞうせんじよないのこくまなく見物けんぶつしたが、ふとると、洞窟どうくつ一隅いちぐうに、いわ自然しぜんえぐられて、だいなる穴倉あなぐらとなしたるところ其處そこに、嚴重げんぢうなるてつとびらまうけられて
みし/\と段階子だんばしごあがつて来るのが、底の知れない天井の下を、穴倉あなぐらから迫上せりあがつて来るやうで、ぱつぱつと呼吸いきを吹くさまに、十能の火が真赤な脈を打つた……ひややかな風が舞込まいこむので。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たま/\其なかに這入つて見ると、穴倉あなぐらしたで半年余りも光線の圧力の試験をしてゐる野々宮君の様な人もゐる。野々宮君は頗る質素な服装なりをして、そとで逢へば電燈会社の技手位な格である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「御主人はこの中へ降りて見て下さい。中には三萬兩の小判がある筈だ。穴倉あなぐらは丁度池の下になつて居るでせう」
それにしてもこのままおけば、いつか役人やくにんの目にふれるにちがいありません。お百姓ひゃくしょうはいろいろかんがえたあげく、ゆかの下に穴倉あなぐらって、その中におかあさんをかくしました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
例によって香港の地下三百メートルにもうけられたる穴倉あなぐらの中にその別荘があるのであった。
幸三こうぞうは、これをて、ガードのほうあおぎますと、あたまうえには、高架鉄道こうかてつどうのレールがはしっていて、ながつつみがつづいていました。そして、つつみしたには、穴倉あなぐらのようになって、倉庫そうこならんでいました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
不意に穴倉あなぐらちた様な心持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこで、そっと穴倉あなぐらへ行って、おふれの出たことをくわしくはなしますと、おかあさんはわらって
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
(あぶない。このままでは殺される。どうかして逃げだしたい。穴倉あなぐらへつづくあの下り口まで、うまくたどりつけるだろうか。下り口の戸を開くまで、死なないでいるかしらん)
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さあ、ここはどんなところかと、八木少年は、すばやく身構みがまえをして、ぐるっと四方八方をにらみまわした。そこは一坪ばかりの円形の穴倉あなぐらになっていた。そこから一方へトンネルがつづいていた。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ふしぎな人物だ。そして、あの穴倉あなぐらの中でなにをしているのかね」