硝子越がらすごし)” の例文
小箪笥こだんすの上に飾つた箱の中の京人形は、蠅が一斉にばら/\と打撞ぶつかるごとに、硝子越がらすごしながら、其の鈴のやうな美しい目をふさいだ。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
美禰子は突然ひたひから団扇をはなして、しづかな姿勢を崩した。よこを向いて硝子越がらすごしに庭を眺めてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
出窓の硝子越がらすごしに、娘の方がゆきかえりの節などは、一体傍目わきめらないで、竹をこぼるる露のごとく、すいすいと歩行あるふり、打水にもつまのなずまぬ、はで姿、と思うばかりで
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あをことごとれて、しづかな湿しめが、硝子越がらすごしに代助のあたまんでた。なかいてゐるものは残らず大地だいちうへに落ちいた様に見えた。代助はひさりでわれかへつた心持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一番窓に近い柳沢は、乱暴に胸をそらして振向いたが、硝子越がらすごしに下をのぞいて見て
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)