硝子壜ガラスびん)” の例文
富士を須走口すばしりぐちへ降りる時、すべって転んで、腰にぶら下げた大きな金明水きんめいすい入の硝子壜ガラスびんを、こわしたなり帯へくくりつけて歩いた彼の姿扮すがたなどが眼に浮んだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
博士の胸もとにつきつけ「折角せっかくかえしてやろうというのに、らなきゃ黄金の環もこっちへ貰って置く。おいワーニャ。お前はその『消身法』の硝子壜ガラスびんを貰ってゆけ」
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あの夜、秘密に倉庫から警察へと搬んだ酸は、大きな硝子壜ガラスびんに入って全部で二十五個だった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうして黒い眼を動かして、うしろ硝子壜ガラスびんしてある水仙をかえりみながら、英吉利は曇っていて、寒くていけないと云った。花でもこの通り奇麗きれいでないと教えたつもりなのだろう。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は腰を折りまげて、卓子テーブルの下をのぞきこむと、のろのろした立居振舞たちいふるまいとはまるでちがった敏捷びんしょうな手つきで、一抱ひとかかえもあろうという大きな硝子壜ガラスびんをとりだして、卓子の上に置いた。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おろかしき狼狽のみにとどまっているわけではない。すなわち、ここにある硝子壜ガラスびんの中をちょっとのぞいてみるがいい。この中に入っているものは何であるか御存知であろう。これは蠅である。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
一人の奥さんの指から、ルビーの指環ゆびわが借りられ、それを使って、硝子壜ガラスびんの下部に小さな傷をつけた。それから登山隊の連中から蝋燭ろうそくが借りられた。灯をつけると、硝子壜の傷をあぶった。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その中には、貯金帳や、戸籍謄本こせきとうほんらしいものや、かびの生えた写真や、其他そのた二三冊の絵本などが入っていたが、わしが横瀬の前へ取出したものは、手文庫の一隅いちぐうに立ててあった二〇㏄入いり硝子壜ガラスびんだった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)