瓦葺かわらぶき)” の例文
此方こちらには葡萄棚もあり其の他種々いろ/\菓物くだものも作ってありまして、彼是一町ばかり入ると、屋根は瓦葺かわらぶきだが至って風流な家作やづくりがあります。
それから左右の家並いえなみを見ると、——これは瓦葺かわらぶき藁葺わらぶきもあるんだが——瓦葺だろうが、藁葺だろうが、そんな差別はない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
会所の新築ができ上がったことをも寿平次に告げて、本陣の焼け跡の一隅いちぐうに、以前と同じ街道に添うた位置に建てられた瓦葺かわらぶきの家をさして見せた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ガラス工場などは板屋根だからよけいに草が茂っていたが、瓦葺かわらぶきの屋根にも青々とした草が黄色い花をつけていた。
明治の初年薩摩境に近い肥後ひごの南端の漁村から熊本の郊外に越した時、父が求めた古家で、あとでは瓦葺かわらぶきの一棟が建増されたが、母屋おもやは久しく茅葺であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ツイ眼下に、瓦葺かわらぶき大家根おおやね翼然よくぜんとしてそばだッているのが視下される。アレハ大方馬見所ばけんじょの家根で、土手に隠れて形は見えないが車馬の声が轆々ろくろくとして聞える。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それでも彼はなお一方の血路けつろを求めて、ある人家の屋根へ攀登よじのぼった。茅葺かやぶき板葺こけら瓦葺かわらぶきの嫌いなく、隣から隣へと屋根を伝って、彼は駅尽頭しゅくはずれの方へ逃げて行った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
園をかこめる低き鉄柵てっさくをみぎひだりに結いし真砂路まさごじ一線に長く、その果つるところにりたる石門あり。入りて見れば、しろ木槿もくげの花咲きみだれたる奥に、白堊しらつち塗りたる瓦葺かわらぶきの高どのあり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
茅葺かやぶきには様々な美しいのがあるし、瓦葺かわらぶきでも石州せきしゅう窯場かまばの赤屋根の如きは忘れられぬものではあるが、形の立派さではこの石屋根に比肩するものは他にあるまい。支那の強ささえ聯想れんそうされる。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
雪かなしいつ大仏の瓦葺かわらぶき
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
瓦葺かわらぶきの門の柱に里見恭助という標札が出ている。三四郎はここを通るたびに、里見恭助という人はどんな男だろうと思う。まだ会ったことがない。門は締まっている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのをかこめる低き鉄柵てっさくをみぎひだりに結ひし真砂路まさごじ一線ひとすじに長く、その果つるところにりたる石門あり。りて見れば、しろ木槿もくげの花咲きみだれたる奥に、白堊しろつち塗りたる瓦葺かわらぶきの高どのあり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ですが屋根が本格的な形をとるのは一段と進んだ瓦葺かわらぶきです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
けれども這入はいるのは始てゞある。瓦葺かわらぶきの門の柱に里見恭助といふ標札がてゐる。三四郎は此所こゝを通るたびに、里見恭助といふ人はどんな男だらうと思ふ。まだつた事がない。門はしまつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)