玉露ぎょくろ)” の例文
お茶といっても、茶碗の底をかき回して、蛙の眼玉を製造するあの面倒な抹茶まっちゃではない。極く上等の玉露ぎょくろかなんかを、ひとり、音もなく、たのしむのである。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
要するに、焼いたはもを熱飯あつめしの上に載せ、はしし潰すようにして、飯になじませる。そして、適宜てきぎ醤油しょうゆをかけ、玉露ぎょくろ煎茶せんちゃを充分にかけ、ちょっとふたをする。
鱧・穴子・鰻の茶漬け (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
両腕はまさにける様だ。斯くして持ち込まれた水は、細君さいくん女中じょちゅうによって金漿きんしょう玉露ぎょくろおしみ/\使われる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
玉露ぎょくろに至ってはこまやかなる事、淡水たんすいきょうを脱して、あごを疲らすほどのかたさを知らず。結構な飲料である。眠られぬと訴うるものあらば、眠らぬも、茶を用いよと勧めたい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで茶の好きな人は玉露ぎょくろなど入れて、茶盆ちゃぼんそばに置いて茶を飲んでいても、相手が二段引きの鯛ですから、慣れてくればしずかに茶碗を下に置いて、そうして釣っていられる。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ふたをあけるとそのままお盆代りになる、日本旅館などによくある手のもので、なかに小さな急須きゅうす、小さな茶碗ちゃわんに茶卓、小さな茶筒と、すべて小型の、玉露ぎょくろ用の茶器がはいっていた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
上の方には紫の紐附ひもつき玉露ぎょくろの小つぼが並べてあるが、それと中段の煎茶の上等が入れてある中壺は滅多めったに客の為めふたが開けられることはなく、売れるのは下段の大壺の番茶が主だつた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
質極めてよく、一反の値が八、九円から、上等品になると二十円を呼ぶ。もとより手紡てつむぎ手織の白木綿である。宇治では一斤六、七十円の玉露ぎょくろが作られ、東京では一帖四十円の海苔のりがあると言う。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この家の主人はずうずうしい恥知らずのけちんぼなりとそしる人もあれば、あるいはわれわれがちょっと来るたびごとに五円、六円の玉露ぎょくろを出す必要はない、彼は「戊申詔書ぼしんしょうしょ」のご趣意をよく奉ずる
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
緋友禅ひゆうぜんの炬燵蒲団に、草双紙と三味線に、玉露ぎょくろと栗饅頭。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
睡気覚ねむけざましに玉露ぎょくろでも入れさせようか?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)