火入ひい)” の例文
火入ひいれにべた、一せんがおさだまりの、あの、萌黄色もえぎいろ蚊遣香かやりかうほそけむりは、脈々みやく/\として、そして、そらくもとは反對はんたいはうなびく。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じゃこの芳年よしとしをごらんなさい。洋服を着た菊五郎と銀杏返いちょうがえしの半四郎とが、火入ひいりの月の下で愁嘆場しゅうたんばを出している所です。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
久米一ほどの名人の火入ひいれする窯焚かまたきはそうザラにあるものでなく、大川内おおかわち伊万里いまり有田ありた三地さんちを通じてみても、今度の献上陶器けんじょうすえものの火入れは、どうしても百助でなければおさまりがつかない。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はさっきあの芳年よしとしの浮世絵を見て、洋服を着た菊五郎から三浦の事を思い出したのは、殊にその赤い月が、あの芝居の火入ひいりの月に似ていたからの事だったのです。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)