“滅(け)” の例文
故(ことさ)らに迹(あと)を滅(け)さんと、きりこみし人々、皆其刀を礪(と)がせし中に、一瀬が刀の刃(は)二個処いちじるしくこぼれたるが、臼井が短刀のはのこぼれに吻合(ふんごう)したるより露(あら)われにき。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我が持てる燭も、人に觸れさせじとする骨折は其甲斐なくて、打ち滅(け)さるゝこと頻(しきり)なりければ、われ餘りのもどかしさに、智慧ある人は我に倣(なら)へよと叫びつゝ、柄ながらに投げ棄てつ。
十字路で約束通り相良十吉を拾い上げるようにして車内へ入れると、運転手に命じて灯火(あかり)を滅(け)させ急速力を出させた。行手(ゆくて)は烏山(からすやま)の中央天文台、暗闇の中に夜光時計は七時二十分前を示す。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
女らしいぞと口の中で独語(つぶやき)ながら、誰だ女嫌ひの親分の所へ今頃来るのは、さあ這入りな、とがらりと戸を引き退くれば、八(は)ッ様(さん)お世話、と軽い挨拶、提灯吹き滅(け)して頭巾を脱ぎにかゝるは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
杉なる火の車は影を滅(け)した。寂寞(せきばく)として一層もの凄(すご)い。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日の入ると共に最後の燭は吹き滅(け)されて、讀誦は全く果てたり。暗黒は審判の圖の全面を覆へり。絲聲肉聲は又湧きて、世の季(すゑ)の審判の喜怒哀樂皆洋々たる音となりつゝ、われ等の頭上を漲り過ぐ。
女らしいぞと口の中(うち)で独語(つぶやき)ながら、誰だ女嫌いの親分のところへ今ごろ来るのは、さあはいりな、とがらりと戸を引き退(の)くれば、八ッさんお世話、と軽い挨拶、提灯吹き滅(け)して頭巾を脱ぎにかかるは
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)