洒々落々しゃしゃらくらく)” の例文
誰も、この時の道庵の扱いぶりの洒々落々しゃしゃらくらくとして、手に入り過ぎて、人を食った振舞を見て、餅屋は餅屋だと思わぬ者はありません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「父は、すべてを背負って、死ぬつもりかもしれぬ。どうも、今朝の様子は、余りにも洒々落々しゃしゃらくらく、物事を、ちっとも苦にしていない」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だがこの洒々落々しゃしゃらくらくとした禅の坊さまと、自分の母とはいえ、一人のおんなとを結びつけて考えるのは、滑稽こっけいなようにも思えた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
浮世三分五厘、本来無一物の洒々落々しゃしゃらくらくを到る処に脱胎だったい、現前しつつ、文字通りに行きなりバッタリの一生を終った絶学、無方の快道人であった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まけにそれを洒々落々しゃしゃらくらくたる態度で遣ってける。ある時ポルジイはプリュウンというくだものの干したのをぶら下げていた。
人々は大笑いに笑い、自分も笑ったが、自分の慙入はじいった感情は、洒々落々しゃしゃらくらくたる人々の間の事とて、やがて水と流され風とはらわれて何のあととどめなくなった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これによりて見るも先生の平生へいぜい物に頓着とんじゃくせず襟懐きんかい常に洒々落々しゃしゃらくらくたりしを知るに足るべし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
見識も高尚こうしょうで気韻も高く、洒々落々しゃしゃらくらくとして愛すべくたっとぶべき少女であって見れば、仮令よし道徳を飾物にする偽君子ぎくんし磊落らいらくよそお似而非えせ豪傑には、或はあざむかれもしよう迷いもしようが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
宇津木兵馬と福松との道行みちゆきが如く、白山はくさんに上ろうとして上れず、畜生谷へ落ち込まんとして落ち込むこともなく、峻山難路をたどって、その行程は洒々落々しゃしゃらくらく
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
このひとの常として、洒々落々しゃしゃらくらくと子供相手にたわむれている容子ようすは、きょうも平生と少しも変りがなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洒々落々しゃしゃらくらくとわらいながら、一生を弱い者の味方として送った人です。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ここまで迫るとまったく箇々の生命もみがき澄ました白珠のようになっていた。あらゆる迷執もふり落されてかえって洒々落々しゃしゃらくらくたる天真な笑顔の中に生きていられるのだった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)