没薬もつやく)” の例文
旧字:沒藥
詩人しじんこれでは、鍛冶屋かじや職人しよくにん宛如さながらだ。が、そにる、る、りつゝあるはなんであらう。没薬もつやくたんしゆかうぎよく砂金さきんるゐではない。蝦蟇がまあぶらでもない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東の国の博士たちはクリストの星の現はれたのを見、黄金や乳香にゆうかう没薬もつやくを宝のはこに入れて捧げて行つた。が、彼等は博士たちの中でもわづかに二人か三人だつた。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
十字架を地に置く者、穴を掘る者、釘と金槌かなづちとを揃える者、等々。かくて没薬もつやくを混ぜた葡萄酒ぶどうしゅをイエスにすすめました。これは苦痛を軽減するための麻酔剤です。
追随するのは魔法師のセムボビチスと宦官くわんぐわんのメンケラとである。行列の中には七十五頭の駱駝がゐて、それが皆肉桂、没薬もつやく、砂金、象牙などを負うてゐるのである。
バルタザアル (新字旧仮名) / アナトール・フランス(著)
室一杯に香料の匂がせ返える程満ちていることで、しかも其かおりは他でも無い、曹達そうだ土瀝青ちゃん没薬もつやくとを一緒に混合あわせた香であって、即、それは、数千年の昔古代埃及の人達が
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
祭壇の方から香って来る没薬もつやくと乳香のかおり何時いつの間にか岸本の心を誘った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
曲れる鉄の道具を鼻口びこうより挿入して、脳髄を残りなく取出し、かくして空虚となれる頭蓋と胴体を棕梠酒しゅろしゅにて洗浄、頭蓋には鼻孔より没薬もつやく等の薬剤を注入し、腹腔には乾葡萄其他そのたの物を填充てんじゅう
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くちあけ没薬もつやくしゆしたたらす。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
花束と、没薬もつやくと、黄金わうごんの枝の果物と
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
衆徳しゅうとく備り給う処女おとめマリヤに御受胎ごじゅたいを告げに来た天使のことを、うまやの中の御降誕のことを、御降誕を告げる星を便りに乳香にゅうこう没薬もつやくささげに来た、かしこい東方の博士はかせたちのことを
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
狭間はざま作りの鉄砲がき! 密貿易の親船だ! 麝香じゃこう、樟脳、剛玉、緑柱石、煙硝、かも、香木、没薬もつやく、更紗、毛革、毒草、劇薬、珊瑚、土耳古トルコ玉、由縁ある宝冠、貿易の品々が積んである! さあ
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
桂枝けいし、はた、没薬もつやく蘆薈ろくわい
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)