汗袗かざみ)” の例文
青丹あおにの色の服に、柳の色の汗袗かざみで、赤紫のあこめなどは普通の好みであったが、なんとなく気高けだかく感ぜられることは疑いもなかった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
下人は、くびをちぢめながら、山吹やまぶき汗袗かざみに重ねた、紺のあおの肩を高くして門のまわりを見まわした。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
六人の侍童の姿は朱色の服の上に桜襲さくらがさね汗袗かざみあこめは紅の裏に藤襲ふじがさねの厚織物で、からだのとりなしがきわめて優美である。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
やや大柄な童女が深紅しんくあこめを着、紫苑しおん色の厚織物の服を下に着て、赤朽葉くちば色の汗袗かざみを上にした姿で、廊の縁側を通り渡殿わたどの反橋そりはしを越えて持って来た。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こちらの童女は濃紫こむらさきに撫子重ねの汗袗かざみなどでおおような好みである。双方とも相手に譲るものでないというふうに気どっているのがおもしろく見えた。
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
右は沈の木の箱に浅香せんこう下机したづくえ、帛紗は青地の高麗錦こうらいにしき、机のあしの組みひもの飾りがはなやかであった。侍童らは青色に柳の色の汗袗かざみ山吹襲やまぶきかさねあこめを着ていた。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
朱色の上に桜の色の汗袗かざみを着せ、下には薄色の厚織のあこめ、浮き模様のある表袴おもてばかまはだにはつちの打ち目のきれいなのをつけさせ、身の姿態とりなしも優美なのが選ばれたわけであった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
童女は臙脂えんじの色の汗袗かざみに、支那綾しなあやの表袴で、あこめ山吹やまぶき色の支那にしきのそろいの姿であった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
からだ相応な短いあこめを黒い色にして、黒い汗袗かざみかば色のはかまという姿も可憐かれんであった。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
姿のよいきれいな童女などの濃い鈍色の汗袗かざみの端とか、後ろ向きの頭とかが少しずつ見えるのは感じよく思われたが、何にもせよ鈍色というものは人をはっとさせる色であると思われた。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ずっと奥のほうへ寄って乗った人々の服装の優美な色も童女の上着の汗袗かざみの端の少しずつれて見える様子にも、わざわざ目立たぬふうにして貴女きじょの来ていることが思われるような車が二台あった。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)