武者溜むしゃだま)” の例文
ここばかりでなく、恐らくは、やぐらの上でも、武者溜むしゃだまりでも、支塁のここかしこでも、一瞬ことごとく同じ思いにとらわれたのではなかろうか。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城中はどことなく騒然そうぜんとして、出征の身支度をした将士が、武者溜むしゃだまりにもいっぱい見えたし、諸門の口や廊下にも駆け歩いていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黙々、帰って来ると、大勢の将士がいる武者溜むしゃだまりの真ん中にどっかり坐ってしまった。人々は、貞昌の顔色に、すべてを読みぬいていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、右手の東詰ひがしづめには、平相国清盛へいしょうこくきよもりどのの、西八条の館があったのですが、荒れ果てているさまを見ると、今は、誰の武者溜むしゃだまりになっておりますことやら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜明けの微光が、詰所つめしょ武者溜むしゃだまり、狭間廊下はざまろうかうまやの隅々にまでこぼれ渡った頃にはもう
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者溜むしゃだまりとよぶ望楼下の大床の間に床几しょうぎをすえて、次々に来る、吹上ふきあげの報告を待っています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やぐらの狭間にも武者溜むしゃだまりの狭間にも、そのほかあらゆる兵の居場所に、城兵の顔が集まった。そして、何やら云いさわぐ声が、滝川の水音を越えて、強右衛門の耳にも聞えて来る。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清盛は、武者溜むしゃだまりとなっている幄舎あくしゃの横で、ふと、源ノ渡を見かけて、そうたずねた。
今のところ、この城中の兵は、大半以上、元蜂須賀村の野武士の出が、侍となって固めているが、彦右衛門の弟、蜂須賀又十郎だの、甥の渡辺天蔵なども、武者溜むしゃだまりのうちにいた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者溜むしゃだまりの前を通ると、赤い火がいぶっていた。その中で、寝起きの武者たちは、籠手こてひもをむすんだり、草鞋わらじの緒をかためたり、弓や鉄砲を調べたり——物々しいざわめきを描いていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正季は曲輪くるわの内へ入って、物具もののぐ奉行の佐備さび正安に会い、やがてまた、ただ一人で、外曲輪そとぐるわのガタガタする長い板廊下を踏んで、物具倉もののぐぐらと共にあるだだッ広い武者溜むしゃだまりのゆかを覗きに行った。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが具足に五体と胆心を固めた藤吉郎は、非難、反目、嘲侮ちょうぶ、一切に耳もないかの如く、城内武者溜むしゃだまりの床場ゆかば床几しょうぎを置き、夜もすがら出兵の人員、隊伍、荷駄、軍需などにわたって指図していた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを、伝え聞いた武者溜むしゃだまりの血気組けっきぐみは、もってのほか、憤慨ふんがいした。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)