武者振むしゃぶ)” の例文
忠作が武者振むしゃぶりつくのを一堪ひとたまりもなく蹴倒けたおす、蹴られて忠作は悶絶もんぜつする、大の男二人は悠々ゆうゆうとしてその葛籠を背負って裏手から姿を消す。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
時間にはおくれたれどともかくも停車場すてーしょんおもむかんと大原は中川家を辞して門外へでたる途端とたん、走り寄って武者振むしゃぶくお代嬢
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
兎に角みんなが法師丸の雄々しい姿をめそやして、「初陣ういじんの時の武者振むしゃぶりが見たい」とか、「こう云う世継ぎをもうけておられる武州殿は仕合わせだ」
世間は他人ひとごとどころではないと素気なくね返す。彼はいきり立ち武者振むしゃぶりついて行く。気狂いみているとて今度は体を更わされる。あの手この手。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「いえいえ放しませぬ、訳を話してくださらぬうちは、けっしてこの手を放すことではござりませぬ」と、女はいよいよ力をめて、一心に武者振むしゃぶりついた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
倭文子の胸に武者振むしゃぶりつき、柔かい肌に、けものの様な爪を立てて、かきむしり、かきむしるのであった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
山姥やまうばがいきなりかやのたばに武者振むしゃぶりつきますと、はずみですべって、ころころとたにそこにころがりました。そのに女の子は、またどんどんげて行きました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
兄さんに武者振むしゃぶりつきたかった。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
お銀様は神尾主膳に武者振むしゃぶりつきました。けれどもそれは、やはりお銀様の逆上のあまりで、かえって主膳のために荒らかに組敷かれてしまったのはぜひもありません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼女は叫びながら、いきなりわしに武者振むしゃぶりついて来た。鋭い爪がわしの肉に食い入った。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つまり罠の仕組みを知れば知る程、知らない仕組みにかゝつたやうに無茶に逃げ出す力が出ないからな。ところでそのじいさんがおかあさんの武者振むしゃぶりには他には類の無い裏にデリケートな処がある。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
与八は一時の怒りに道庵先生へ武者振むしゃぶりついてみましたけれども、もともと悪気わるげがあるのではないですから、持扱い兼ねていると、道庵先生はいい気になって、与八の頭へ噛りついたり引っ掻いたり
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
博士はけものの様に唸りながら、刑事に武者振むしゃぶりついて行った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お角は突き放されてまた武者振むしゃぶりつく、それをお絹は突き返す。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして、いきなり明智に武者振むしゃぶりつき
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
前後の思慮もなく鍛冶倉に武者振むしゃぶりつきました。