横物よこもの)” の例文
お兄様がまだ若くて、陸軍へ出られて間もない明治十五年頃でしたろうか、千住の家で書斎にお使いの北向の置床おきどこに、横物よこものの小さいふくを懸けて眺めておられました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
何だか細かい線でいてある横物よこもので、打見たところはモヤモヤと煙っているようなばかりだ。あかや緑や青や種〻いろいろ彩色さいしきが使ってあるようだが、図が何だとはサッパリ読めない。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……これから案内あんないしたがつて十二でふばかり書院しよゐんらしいところとほる、次は八でふのやうで正面しやうめんとこには探幽たんにゆう横物よこものかゝり、古銅こどう花瓶くわびんに花がしてあり、煎茶せんちや器械きかいから、莨盆たばこぼんから火鉢ひばちまで
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
西側の壁には安井曽太郎やすゐそうたらうの油絵の風景画が、東側の壁には斎藤与里さいとうより氏の油絵の艸花くさばなが、さうして又北側の壁には明月禅師めいげつぜんじ無絃琴むげんきんと云ふ艸書さうしよ横物よこものが、いづれもがくになつてかつてゐる。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鋳物いものの香炉の悪古わるふるびにくすませたると、羽二重はぶたへ細工の花筐はなかたみとを床に飾りて、雨中うちゆうの富士をば引攪旋ひきかきまはしたるやうに落墨して、金泥精描の騰竜のぼりりゆう目貫めぬきを打つたるかとばかり雲間くもま耀かがやける横物よこものの一幅。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
とこには抱一上人ほういつしょうにん横物よこものはとりまして、不動さまに道了どうりょうさまと塩竈しおがまさまのおふくと掛け替り、そばに諸方から見舞に来た菓子折が積んで有りまするが、蒸菓子の方は悪くなるから先へ手を附け
西側の壁には安井曾太郎やすゐそうたらう氏の油絵の風景画が、東側の壁には斎藤与里さいとうより氏の油絵の艸花くさばなが、さうして又北側の壁には明月禅師めいげつぜんじ無絃琴むげんきんと云ふ艸書さうしよ横物よこものが、いづれも額になつてかつてゐる。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)