桑名くわな)” の例文
このわしか。——これもその呂宋兵衛が、桑名くわなから浜松へくるとちゅうでつかまえたのを、菊池半助きくちはんすけのところへ土産みやげに持ってきたのじゃ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんと言っても蛤御門の付近は最も激戦であった。この方面は会津、桑名くわなまもるところであったからで。皇居の西南にはくすの大樹がある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうして何等かの策略で吾輩をへこませるために、君をここへ連れて来るんだな……と気が付いたから、ドッコイその手は桑名くわなの何とかだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
西は渺々びょうびょうたる伊勢の海を眼界の外にかすませて桑名くわなへ至る石船の白帆は風をはらんで、壮大な三角洲の白砂はくしゃと水とに照りあかって、かげって、通り過ぎる、低く、また
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
桑名くわな町を歩くと、珍らしくも竹椅子だとか、桜皮の組物だとか、また形のよい赤蝋燭などが目に止ります。産額は小さくとも土地のものとして記憶すべきでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かたわらに敷き放してあったござの上に尻を乗せたのは、この宿では滅多めったに見かけないが桑名くわなから参宮の道あたりへかけてはかなりに知られた黒坂というわるでしたから、茶店の老爺は気をんでいると
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ふむ。いい土性っ骨だぜ」妙に感心して坊主頭を振り立てた奴、「だがね、その手は桑名くわなの焼きはまぐりだ。なあ、おめえが今しがたあそこのお邸を抜けて来たてえこたあこちとら百も、承知なんだ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あの桑名くわな口の木戸です」
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「二十九余町よちょう——まア、ざっと三十里でございまする。すると桑名くわなのごじんへつきますまでには、約三日ののちとあいなります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早やかどとざ古伊勢ふるいせ桑名くわなまち
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
中にはさんでいく一ちょう鎖駕籠くさりかごは——まさしく、桑名くわな羽柴秀吉はしばひでよしへおくらんとする貴人きじん僧形そうぎょう武田勝頼たけだかつより幽囚ゆうしゅうされているものと見られる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桑名くわなを通るにも、長島へ入るにも、細心を要しましたが、しかし、長島城内へ足を入れると、これは成功するなと、何やら、予感がいたしました」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善鬼は、桑名くわなの船頭の子で、さしたる教養もなかったが、強いことは天性だった。後には、一刀斎でさえ、善鬼の剣を、如何いかんともすることができなかった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「光秀。——桑名くわな滝川一益たきがわかずますより、頻々ひんぴん、援軍の催促さいそくである。そちも、出向いて、ひと手勲てがらいたして来い」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伏見、鳥羽、枚方ひらかた方面から敗退して来る会津あいづ兵や、桑名くわなや、幕府の旗下はたもとの侍は、青い泥を塗ったような顔と、血によごれた体を持てあまして、よろよろと、市中にあらわれた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、桑名くわなの城下で、すすけた古物屋のたなざらしの中から見つけ出した笛だった。値はお話にならないくらい安かったが、手がけてみると逸品いっぴんで、誰か、名人の手になった作にちがいない。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桑名くわなへ、たすけにゆけ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桑名くわなへ——」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)