つく)” の例文
裏の物干しには、笹村が押入れにつくねておいた夏襯衣なつシャツ半帕ハンケチ寝衣ねまきなどが、片端から洗われて、風のない静かな朝の日光にさらされていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
えますとも、乾溝からどぶ背後うしろがずらりと垣根かきねで、半分はんぶんれたまつおほき這出はひだしてます。そのまへに、つくねた黒土くろつちから蒸氣いきれつやうなかたちるんですよ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奥の四畳半で、一ト捫着もんちゃくした後で、叔父の羽織がくしゃくしゃになって隅の方につくねてあった。叔母は赤い目縁まぶちをして、お庄が上って行っても、口も利かなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
先刻さっきまでていた掻捲きなどの、そのままそこにつくねられた部屋の空気も、いとわしく思えて来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
段々肥立ひだって来た、売色くろうとあがりの細君の傍で、お島は持って行った花を花瓶かびんしたり、薄くなった頭髪あたまくしを入れて、つくねてやったりして、半日も話相手になっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)