施与せよ)” の例文
東国の逆乱もすみやかな静謐せいひつを見、相共によろこばしい。さっそく将士の軍功の施与せよは、綸旨りんじの下に、朝廷でおこなうであろう。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかまの者と争いが生じ、その者のために両眼を突きつぶされたので、その日の食にも窮していると申し、泣いて施与せよを乞うたと書いてございました。
と、またその近所の路傍に、十二三位のと九歳位との二人の女の児が、唄をうたつて路傍の人の施与せよを乞ふてゐるを目にした。その周囲には、人が黒山のやうに立つてゐる。
脱却の工夫 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
彼は自尊心から、他人の恵みにあずかることを拒んだ。独力できりぬけてゆこうと決心した。母が恥ずかしい施与せよを受けたり求めたりしてるのを見て、彼は幼いころから非常に心を痛めていた。
勝家がそれまでに用いた日数と、秀吉が費やして来た日数と、天は同じ運行のもとに施与せよしていた。本能寺の日から指折っても、まる四ヵ月。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二絃琴などといっているが、もちろん法はずれであろうし、曲も勝手に作ったのであるから、人に聞かせたり、施与せよにあずかる価値のないことも知っている。
一つ 軍功の施与せよは朝廷直々じきじきの令に待つべきを、北条時行を追って府に入るや、僭上にも身勝手に諸所公領の地をいて、これを餓狼がろうの将士に分つ。罪の五たり。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「追って、小栗栖村一同の村民へ施与せよいたすであろう。家臣をつかわして地頭名主へ手渡してやる。汝に持たしては、途中、一斗の酔でこぼしてしまうに違いない」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何かあらん。施与せよまた、他に何をか加うあらん。——あるは、かつっ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)