推遣おしや)” の例文
小使うやうやしく入来いりきたりて卓子テエブルの上にそれをせつ、一礼して退出すさりいずるを、と見れば毎晩新聞なり、綾子はかたえ推遣おしやりて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
満枝は飯桶を我が側に取寄せしが、茶椀ちやわんをそれに伏せて、彼方あなた壁際かべぎは推遣おしやりたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
沈み切っていた、職人頭の富さんが、運八に推遣おしやられて坐に返ると、一同みんなも、お神輿みこしの警護が解けたように、飲みがまえで、ずらりとお並びさ、貴方。
団扇うちわで顔を隠さしったなり。背後うしろへ雪のような手をのばして、荷車ごとじいどのを、推遣おしやるようにさっせえた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誰も居ないと見定めると、直ぐに、娘をわきへ推遣おしやって、手代が自分で、爺様じいさんの肩をたたき出した。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)