振事ふりごと)” の例文
二幕目に大薩摩おおざつまがあって、浮舟の君と匂う宮のすだまとの振事ふりごとじみたところがあると、急に顔色がうごいて、ふしをつけて朗読なさりはじめた。
古い暦:私と坪内先生 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さて、遺憾ながら、この晴の舞台において、紫玉のために記すべき振事ふりごとは更にない。かれは学校出の女優である。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酔うととりとめなくなり、いつぞやなどは吉原の往来端で、人立ちをはばからずに矢の根五郎の振事ふりごとの真似をしてみせ、大方の物笑いになったようなこともあった。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まるきり型や振事ふりごとの心得のない二葉亭では舞台に飛出しても根ッからえなかったろうが、沈惟敬しんいけいもどきの何とかいう男がクロンボを勤めてるよりも舞台を引緊めたであろう。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
三幕目は金助が鯱鉾を盗むところで、家橘の金助が常磐津ときわづつかって奴凧やっこだこの浄瑠璃めいた空中の振事ふりごとを見せるのであった。わたしは二幕目の金助の家を書いた。ここはチョボ入りの世話場せわばであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
て、遺憾ながら、此の晴の舞台に於て、紫玉のためにしるすべき振事ふりごとは更にない。かれは学校出の女優である。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
本雨ほんあめだ。第一だいいちれたいへなかくやうな、かささした女中ぢよちうなゝめそでも、振事ふりごとのやうで姿すがたがいゝ。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)