懸合かけあ)” の例文
老先生の懸合かけあいの結果を案じつつ、宵からの長時間を、奉行所の門外にかがみ込んで、じっと、待ちぬいていた耀蔵であった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「で帯刀から人をもって才三の親に懸合かけあうと、才三も実は大変貰いたかったのだからそのむねを返事する。結婚の日取りまできめるくらいに事がはかどったて」
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ワキとの懸合かけあいに入ると、やっと朔造氏が気息をつくろって顔色蒼然たるまま謡い出し、山伏舞を勤め終ったが、その焦瘁しょうすい疲労の状は見るも気の毒な位であった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
老爺じじい対手あいてじゃ先行さきゆきがしない。し、直接じかづけ懸合かけあおう。」とふいと立って奥へずかずか。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百姓は大きに腹を立てて厳重に懸合かけあうけれども、何分証拠がないこととて如何とも仕様がない。弱り果てて、当時有名の弁護士カランの許をおとずれ、どうか取戻の訴を起してくれと頼んだ。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
懸合かけあつてみるが、姥さんはなか/\うんと言はなかつた。
と、周馬は、相手のひるんだ色を、すぐ心に読んできて、その足もとへまた懸合かけあいをもちだした。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そののち、折を見て、父が在世ざいせの頃も、その話が出たし、織次ものちに東京から音信たよりをして、引取ひきとろう、引取ろうと懸合かけあうけれども、ちるの、びるのでまとまらず、追っかけて追詰せりつめれば
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まだ枡屋に懸合かけあってないから、今夜は駄目だ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
注いでは飲む茶碗酒の勢いが、あたるべからざるものと見て、太夫元を代表して懸合かけあいに来た遊びにんていの男も、啖呵負たんかまけがしたようにほうほうのていで引きさがりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坊主ばうずが、たがひ一声ひとこゑうぐひすふくろふと、同時どうじこゑ懸合かけあはせた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「八十三郎が、気づいて、すぐ救いあげたが、助かるまい。里方へ、黙ってもおけぬ。石川主殿は、娘を殺したのは、庄次郎じゃと、半蔵殿とこのほうへ、膝づめの懸合かけあい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
借りうけて、むしろでも張り出しゃあ持って来いだ。てまえが懸合かけあって、三日のあいだ、あいつらを追っ払うことにしますから、親分、ちょっとここで、待っていておくんなさい
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬を貸せと懸合かけあっているらしい。迷惑そうであったが否み難い要務の者とみえ、番将自身、曳いて来て渡した。僧はそれに乗ると、行市山の営へと前にも増して急いでいた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄を毛頭星もうとうせいの孔明、弟を独火星の孔亮こうりょうといい、壮丁わかものや小作の百姓もたくさん抱えていたが、去年、町の大金持にだまされて、伝来の田地山林をのこらず法的に差押さえられ、その懸合かけあい中に
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがしも余りの理不尽と存じ、唯今目付役人立ち会いの上、京極方へ懸合かけあいに参りましたるところ、玄蕃持病さし起り試合大儀の様子ゆえ、引き止めさせたなれど、その代りに別の剣士を選び
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よし、おれが懸合かけあって、娘をとりかえして来てやる……」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「丈八郎へは、貴公たちから、懸合かけあってくれまいか」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、これはどこまで、根気こんき懸合かけあいだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)