悲歎なげき)” の例文
宮はかたはらに人無しと思へば、限知られぬ涙に掻昏かきくれて、熱海の浜に打俯うちふしたりし悲歎なげきの足らざるをここにがんとすなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
パレスチナにおいても、橄欖かんらんの如きはかくしてこれを老衰より少壮によび戻し得るのである。樹には復活あり人には復活なし、これヨブの悲歎なげきであった。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
女は悲歎なげきのなかに一人きりに取り残されて、全く途方に暮れずにはいられなかった。勿論、男は相変らず夜毎に来て、そういう女をいたわり尽してはくれた。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
をつと蓑笠みのかさ稿脚衣わらはゞきすんべを穿はき晴天せいてんにもみのきるは雪中農夫のうふの常也)土産物みやげもの軽荷かるきにになひ、両親ふたおや暇乞いとまごひをなし夫婦ふうふたもとをつらね喜躍よろこびいさみ立出たちいでけり。正是これぞ親子おやこ一世いつせわかれ、のち悲歎なげきとはなりけり。
領主 暫時しばらく叫喚けうくわんくちぢよ、この疑惑ぎわくあきらかにしてその源流げんりう取調とりしらべん。しかのち、われ卿等おんみら悲歎なげきひきゐて、かたきいのちをも取遣とりつかはさん。づそれまでは悲歎ひたんしのんで、この不祥事ふしゃうじ吟味ぎんみしゅとせい。
合邦がつぽう」の玉手御前たまてごぜん悲歎なげきをば弾語ひきがたりする風情ふぜいすわ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)