悪態あくたい)” の例文
この猛烈なる悪態あくたいで浮足立った人が総崩そうくずれになって、奔流ほんりゅうの如く逃げ走る。兵馬に槍を貸すことを謝絶ことわった役人連中までが逃げかかる。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あてにしている奴はこの梁山泊りょうざんぱくにはいますまいぜ。李逵や武松の悪態あくたいはお耳ざわりかもしれねえが、また、むりでないところもある
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏だ、ああ痛え! おお痛え! いいえ、旦那は生仏いきぼとけでござんす。悪態あくたいついた野郎を憎いとも思わねえで、御親切な御手当は涙がこぼれます。
ここでも悪態あくたいきながら二人はドンドン走って行く。第二、第三、第四の陣屋をも、二人は無事に駈け抜けた。ここから先には陣屋はない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
涙がかわくに従って、老人はまた、元のように、ふて腐れた悪態あくたいをつきながら、しわだらけの人さし指をふり立てた。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肉を貫いて木材に打ち込む釘の音、悪態あくたいを放ちつつ高声に話し合う兵卒の声。
船長せんちょはそれにゃ気が進まなかったが、仲間の奴らはみんな賛成して、上陸した。十二日もみんなで宝を探し𢌞り、毎日毎日奴らは俺に悪態あくたいをつき、とうとう或る朝みんなが船へ行っちまった。
かさにかかった悪態あくたいの馬子は前へ廻って、くだんの侍の胸倉を取ってしまいました。そこで軽井沢の全宿がふるえ上りました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
途中、ムカッ腹をぶちまけて、独り悪態あくたい口を叩いてやまなかったのは、もちろん、黒旋風李逵りきだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな事があっては大変ですから、私は御本宅の御新造が、さんざん悪態あくたいを御つきになった揚句あげく、御帰りになってしまうまでは、とうとう御玄関のふすまの蔭から、顔を出さずにしまいました。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、さあ斬れ、斬りやがれ、斬って赤いものが出たらお目にかかる、という寸法通りの悪態あくたいになって、身をこすりつけたから、ますますいけない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しまいには飼い主のお松にさえ、さんざん悪態あくたいをついたそうです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と言って悪態あくたいをつくものもありました。しかしそれは、悪態をつく方が間違っているのであります。
大勢の貧窮組が口々に悪態あくたいをつき出したけれど、忠作は意地っ張りで
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、丸山勇仙が悪態あくたいをつき出す。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)