弟子入でしいり)” の例文
長吉ちやうきちをば檜物町ひものちやうでも植木店うゑきだなでも何処どこでもいゝから一流の家元いへもと弟子入でしいりをさせたらばとおとよすゝめたがおとよは断じて承諾しようだくしなかつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其處そこその翌日あくるひ愈〻いよ/\怠惰屋なまけや弟子入でしいりと、親父おやぢ息子むすこ衣裝みなりこしらへあたま奇麗きれいかつてやつて、ラクダルの莊園しやうゑんへとかけてつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天民貧道など奚疑塾けいぎじゆくに居候時分、百ひき持た弟子入でしいりが參れば、よい入門と申候物が、此頃は天でも五山でも、二の弟子入はそれ程好いとは思はず、流行はあぢな物に御座候。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
供揃ともぞろいをして、駕を、わざわざ呉服橋の吉良家へ向けた。あくまで師門に弟子入でしいりするような礼を執って、内匠頭は、慇懃いんぎんに、指導を仰いだ。その態度が、上野介には気に食わない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは抽斎と森枳園もりきえんとがまじわりを訂した事である。枳園は後年これを弟子入でしいりと称していた。文化四年十一月うまれの枳園は十一歳になっていたから、十三歳の抽斎が十一歳の枳園を弟子に取ったことになる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)