“引退”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ひきさが63.2%
ひきしりぞ12.3%
ひきさ3.5%
ひきの3.5%
ひっさが3.5%
ヒキノ3.5%
いんたい1.8%
しりぞ1.8%
のい1.8%
ひききが1.8%
ひっこ1.8%
ひつさが1.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
用ありげな小姓の一人が、何気なく、ひょいと幕を上げてはいりかけたが、小姓でさえ、顔を赤くして、あわてて引退ひきさがってしまった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は何事なるや知らざれどこゝにて目科と共に馬車をくだり群集を推分おしわけて館の戸口に進まんとするに巡査の一人強く余等よらさえぎりて引退ひきしりぞかしめんとす
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「おれたちも文身庄ほりしょうの身内だ、鶴だか丹頂だか知らねえが、興行元から頼まれて、前貸も取れねえじゃ引退ひきさがるわけにはいかねえ。のぞみどおり殺してやるから、泣き声をあげるなよ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我らは海岸に立ちて、脚下に襲い来る丈余じょうよの浪がたちまち力尽きたるが如くに引退ひきのくを見て、ヨブ記のこの語の妙味を悟り得るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
主婦おかみは心なく飛込むも異なものなり、そのまま階子段へ引退ひっさがるも業腹ごうはらなりで、おめおめと見せられる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
秀吉ガ御馬ノ先手衆サキテシユウ鑓合ヤリアハセ申スト等シク、日向守ガ備ヘヲバ突キ崩サレ、一町バカリ引退ヒキノク処ヘ、又々、敵ノ先手ツメカケ候ヘバ、秀吉、味方若シヤ押掛オシカカラレクヤト思シメシケム
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことながあひだ野田のだ身上しんしやうつて近所きんじよくら親方おやかたをしてるのが郷里きやうりちかくからたので自然しぜん知合しりあひであつたが、それが卯平うへい引退いんたいすゝめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
食事を終った教団の人々は、めいめい食器を始末し、その辺を清潔に掃除し、威儀を正して左右に引退しりぞく。食物の残りを入れた壺ひとつだけ、内庭の中央に残し置く。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
職は引退のいても頭脳は鋭く、その頭脳の働き方が、近代の言葉で説明すると、いわゆる合理的であり科学的であって、在来ざいらいの唯一の探偵法たる「見込み手段」を排斥し、動かぬ証拠を蒐集して
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、私は後へ引退ひききがった。ト娘の挿したかんざしのひらひらする、美しいふさ越しに舞台の見えるのが、花輪で額縁を取ったようで、それもよしさ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あやうく鉄瓶の口へ顔を出した湯がおどり出しもし得ず引退ひっこんだり出たりしているに鍋は火にかけられる。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とき其時そのとき玄々げん/\不可思議奇絶怪絶、あかきものちらりと見えて、背向うしろむきの婦人一人いちにん、我を去る十歩の内に、立ちしは夢か、幻か、我はた現心うつゝごころになりて思はず一歩ひとあし引退ひつさがれる、とたんに此方こなたを振返りし
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)