引掻ひつか)” の例文
引掻ひつかきさうな権幕けんまくをするから、吃驚びつくりして飛退とびのかうとすると、前足まへあしでつかまへた、はなさないからちかられて引張ひつぱつたはづみであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蛇は苦しいから、立木にまきついて締めると、亀はその手足のつめで、蛇のおなかをガサ/\引掻ひつかいて、とう/\その腹を裂いて、出てしまふ。
蛇いちご (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ると煎餅せんべいのやうなうすつぺらの蒲団ふとんつめ引掻ひつかくとポロ/\あかおちる冷たさうな蒲団ふとんうへころがつてるが、独身者ひとりものだからくすりぷくせんじてむ事も出来できない始末しまつ、金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
大きなゐのししと大きなくまが、二疋共ひきとも引掻ひつかかれて、噛切かみきられて、大怪我おほけがをして死んで居るぢやありませんか。しかも二疋とも大きな石を腹の下に抑へて、頭を並べて死んで居るのです。
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
時々とき/″\悪戯いたづらをして、その紅雀べにすゞめ天窓あたまむしつたり、かなりやを引掻ひつかいたりすることがあるので、あの猿松さるまつては、うつかり可愛かあいらしい小鳥ことり手放てばなしにして戸外おもてしてはけない
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)