川下かわしも)” の例文
(まあ、女がこんなお転婆てんばをいたしまして、川へおっこちたらどうしましょう、川下かわしもへ流れて出ましたら、村里の者が何といって見ましょうね。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その頃、両国りょうごく川下かわしもには葭簀張よしずばり水練場すいれんばが四、五軒も並んでいて、夕方近くには柳橋やなぎばしあたりの芸者が泳ぎに来たくらいで、かなりにぎやかなものであった。
向島 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この川下かわしもは永代橋である。死体はそこまで押し流されて、広い海へ送り出されてしまったのかも知れない。人々は唯いたずらに溜息をつくばかりであった。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それで、川上かわかみのほうへのぼったり、川下かわしものほうへくだったりしながら、研究けんきゅうをつづけるというありさまでした。
それは白とねずみいろのしまのある大理石だいりせき上流じょうりゅうに家のないそのきれいなながれがざあざあったりごぼごぼいたりした。嘉吉かきちはすぐ川下かわしもに見える鉱山こうざんの方を見た。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
取手とってへ参るのには、ここの渡しからでござんすか。それとも川下かわしもの渡しへ行った方がようござんしょうか。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
川下かわしもの彼方に遠く北信の平野が見渡され、更にその向うには、戸隠や妙高などの奇峰が聳えていた。
人間繁栄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
孝行な息子がそっとかくしていた父にたずねてみると、それは何でもない。水に流して見てやや沈むほう、または川下かわしもになるほうがその木の根もとだと教えてくれた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
川下かわしもの方へ稍低くなって行き、そこに瀬を作り、瀬が鳴って二たび川下かわしもの方へ流れて行ってしまうところまで一気に見ると、ここのドナウもやはり犯し難いところがあった。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それから実際十日ばかりすると、王生は例の通り舟をして、川下かわしもの松江へ下って行った。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と——もう天堂一角の方は、それには一顧のいとまも与えず、抜刀ぬきみをあげて川下かわしもを指し
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
キティ台風のときひどくやられてから、そういうふうに波除なみよけを作ったのだという。——その橋を渡り、根戸川の河岸に出て、川下かわしものほうへくだると、すぐ左側に石灰工場があった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ただのときは水につかることのない、川べりのすすきや、はぎの株が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。ごんは川下かわしもの方へと、ぬかるみみちを歩いていきました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
また一人川下かわしもの方から釣棹つりざお肩に帰って来た。やまべ釣りに往ったのだ。やがてまた一人銃を負うて帰った。人夫が立迎えて、「何だ、たった一羽か」と云う。此も山鳥。先刻さっき聞いた銃声じゅうせいはてなのであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はしのところから、川下かわしもへいくにつれて、だんだん、ふかくなりました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう少し川下かわしもの方の○○屋という旅館でございました。時候はやはり五月のはじめで、同じことを毎度申すようですが、川の岸では蛙がそうぞうしく啼いていました。
鰻に呪われた男 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここら奥の谿河たにがわだけれど、ずっと川下かわしもで、東海道の大井川おおいがわよりかいという、長柄ながら川の鉄橋な、お前様。川むかいの駅へ行った県庁づとめの旦那どのが、終汽車しまいぎしゃに帰らぬわ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
キティ台風のときひどくやられてから、そういうふうに波除なみよけを作ったのだという。——その橋を渡り、根戸川の河岸に出て、川下かわしものほうへくだると、すぐ左側に石灰工場があった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いつまでも、いえでは、おつるさんがかえらないので大騒おおさわぎとなり、いつしかむらじゅうのものがして、夜中よなかまで方々ほうぼうさがしたがわからなかった。二、三にちすると、死骸しがい川下かわしもほうかんだのだ。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも川下かわしもの方へ流されて行くうちには、どこかの岸へ泳ぎ付くことがあるかも知れねえと、暗い堤下を探るようにして、どんどんのせきの落ち口まで行ってみたが
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「——正確に数えるとは十三ある、ここから三十町ほどかみで始まって、川下かわしもの滝のところまでにな、——水はその洲の一つ一つにぶつかって分れ、また一つに合流し、そしてまた二つに分れる」
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は石灰工場の川下かわしもで釣りをしていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は石灰工場の川下かわしもりをしていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)