山里やまざと)” の例文
鹿じかなく山里やまざとえいじけむ嵯峨さがのあたりのあきころ——みねあらし松風まつかぜか、たづぬるひとことか、覺束おぼつかなくおもひ、こまはやめてくほどに——
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山里やまざとおぼろに乗じてそぞろ歩く。観海寺の石段を登りながら仰数あおぎかぞう春星しゅんせい一二三と云う句を得た。余は別に和尚おしょうに逢う用事もない。逢うて雑話をする気もない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天子てんし御料ごりようの、はたけのある山里やまざといた青菜あをなも、そこの吉備きび國人くにびとと、二人ふたりんでゐると、がはれ/″\とすることよ、といふ意味いみのことをいはれたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
試みに山里やまざとの人に聴けば、ンー、その草なら内の家の裏の岩に幾らも着いていらーと言う処もあろう。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ひと住まぬ山里やまざとなれど春くればやなぎはみどりはなはくれなゐ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あだしごとはおもふまじるにてもきみさまのおこゝろづかはしとあふればはしなくもをとこはじつと直視ながめゐたりハツと俯向うつむはぢ紅葉もみぢのかげるはしきあき山里やまざとたけがりしてあそびしむかしは蝶々髷てふ/\まげゆめとたちて姿すがたやさしき都風みやこふうたれにおとらんいろなるかはうれひを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
花の波立つ雪の山里やまざと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
山里やまざとを、汽車きしやなかで、ほとんとりこゑかなかつたかれは、何故なぜか、谷筋たにすぢにあらゆる小禽せうきんるゐが、おほき獵人かりうどのために狩盡かりつくされるやうなおもひして、なんとなく悚然ぞつとした。それ瞬時しゆんじで。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「へえ、御覧の通りの山里やまざとで」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)