密集かたま)” の例文
人の家の石垣越しなどに紫や白に密集かたまって咲く丁香花はしどいもさかりの時に成って来た。この好い季節は岸本の心をきかえるようにした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
巴且杏はたんきやう時分じぶんには、おうちうらのお稻荷いなりさまの横手よこてにあるふるにも、あの密集かたまつてりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奥の庭の土塀どべいに近く、大きなすももの樹があった。沢山密集かたまってった枝からは、紫色に熟した実がポタポタ落ちた。三吉は沈思を破られたという風で、子供の方を見て
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長く東京で年月を送って来た高瀬には、塾の周囲まわりだけでも眼に映るものが多かった。庭にある桜の花は開いて見ると八重で、花束のように密集かたまったやつが教室の窓に近く咲き乱れた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)