宿外しゅくはず)” の例文
宿外しゅくはずれの鶴屋という旅籠屋はたごや暖簾のれんをくぐると、平次はいきなり番頭を呼出して、五日前の晩の、浜町の江の島まいりの連中のことを訊ねました。
数えて九軒目に至ったら、さしもに長い宿しゅくはとうとうおしまいになり掛けて、もう一町も行けば宿外しゅくはずれへ出抜ずぬけそうである。はなはだ心細かった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
事件はこれで、一通りかたがつきましたが、この事件から起った風聞というものは、全軽井沢の町を圧し、早くも善光寺平から、坂本の宿外しゅくはずれを走りました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宇都の宮の宿外しゅくはずれに慈光寺という寺がありますから、其の寺を抜けて右へくと八幡山、それから十郎ヶ峯から鹿沼へ出ますから、貴方あなたお早くおいでなさい
道を変えて竹田の宿外しゅくはずれへ出てみると、物具ものゝぐを着けた兵士だのくらを置いた馬などが要所々々に立ち並んでいるので、さてこそ我が君を討ち奉る所存と覚ゆるぞ、汝等こゝにて敵を一と支え支うべし
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたくしは長らく泊って居りますが、供の者が死去なくなりまして、此の宿外しゅくはずれのお寺へ葬りました、今日こんにちは丁度七日の逮夜に当ります、幸いお泊り合せの御出家様をお見掛け申して御回向を
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分はこの時長蔵さんから、最初に三本、あとから一本しめて五本、前後二回に受取ったと記憶している。そうしてそれをなつかしげに食いながら、いよいよ宿外しゅくはずれまで来るとまた一事件ひとじけん起った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
流石さすがに鶴の一声ひとこえで早四郎も黙ってしまいました。此の甲州屋には始終きまった奉公人と申す者は居りません、其の晩の都合によって、客が多ければ村の婆さんだの、宿外しゅくはずれの女などを雇います。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)