実生みしょう)” の例文
「シクラメンの実生みしょうなんか、専門家だってそう楽々じゃあないのさ。だから僕なんか下手なのあたりまえなんだけれど……悲観しちゃうなあ」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
蝦夷松えぞまつ椴松とどまつ、昔此辺の帝王ていおうであったろうと思わるゝ大木たおれて朽ち、朽ちた其木のかばねから実生みしょう若木わかぎ矗々すくすくと伸びて、若木其ものがけい一尺にあまるのがある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
向うの断崖の裂け目には、実生みしょうの小松や、かえで黄櫨はぜなどが枝を伸ばし、すすきが茂みをつくっていた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この食事をした場所で岩の上に実生みしょうのかたまりがあったのを、木下君がいたずら半分に採られたのであったと思う、その当時はあんなに美事みごとの盆栽になろうとは思わなかったが
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
実生みしょうの小松やら、合歓ねむ、女竹、草にはすすきいちごふきの類などが雑生していたというから——慶長十七年の春四月の頃だったという、武蔵と巌流との試合が行われた当時の島の風趣は
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
径の傍らには種々の実生みしょう蘚苔せんたい羊歯しだの類がはえていた。この径ではそういった矮小わいしょうな自然がなんとなく親しく——彼らが陰湿な会話をはじめるお伽噺とぎばなしのなかでのように、眺められた。
筧の話 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
一、この頃の杉の繁殖法は実生みしょうによらずして多くさし穂を用ゐる事
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
中 実生みしょう二葉ふたば土塊つちくれ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)