妖艶あでやか)” の例文
まことに彼はさも思へらんやうにいさみ、喜び、誇り、楽める色あり。彼のおもては為にふばかり無く輝ける程に、常にもして妖艶あでやかに見えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
物を云えば云う程、眼に付いて来る若侍の妖艶あでやかさに、気味が悪るくなったていで、スタスタと自慢の健脚を運んだ。振り返りたいのを、やっと我慢しながら考えた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
額襟許清らに見え、色いと白く肉置ししおく、髪房やかに結いたるが、妖艶あでやかなることはいわむ方無し。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
程も有らずラムプはともされて、だ在りけるままにすくみゐたる彼のかたはらに置るるとともに、その光に照さるる満枝の姿は、更によそほひをも加へけんやうにしからず妖艶あでやか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
長襦袢を着て扱帯しごきまとい、旅人の目には妖艶あでやかな女と見えて、寝ているものの懐へり、嘴を開けると、上下うえしたで、口、鼻をおおい、寐息を吸って吸殺すがためだとございまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)