大疵おおきず)” の例文
二、三か所も打たれた天窓あたま大疵おおきずからは血が流れ出て、さすがの牛行司も半死半生の目にあわされた。村のものは急を聞いて現場へ駆けつけた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
無論一体にきずだらけで処々ところどころ鉛筆の落書のあととどめて、腰張の新聞紙のめくれた蔭から隠した大疵おおきずそっかおを出している。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そういえば、この牢人者は、すこし頭脳あたまもおかしいようなあんばいで、先頃からよだれを垂らして町をふらふらしておりましてな、なにかでひどく打たれたような大疵おおきず
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この大疵おおきずを殆どそれとも分らぬ迄に癒してしまっているが、流石さすがに赭色の大ガレのみは、夏は真向から直射する強烈な日光に、冬はまた頻発するであろう雪崩の為に妨げられて
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
……しかし、茶盌ちゃわんでも、あまり無疵むきず風情ふぜいがない。たれにも一癖ひとくせはあるものよ。それも凡物の大疵おおきずは困りものだが、藤吉郎ほどな男は、数ある男のうちでまず少ないうつわだろう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)