)” の例文
而して、やっと土にみれて、井戸の上に出て見ると、もう、誰も、空地にはらなかった。
過ぎた春の記憶 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ホコリにみれた素跣足すはだしの上に、背縫せぬいの開いた囚人服を引っかけて、太い、新しい荒縄をグルグルと胸の上まで巻き立てている彼の姿を見たら、大抵の者が震え上がったであろう。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丁度その時に、医者は血にみれた手を気にしながら、車内から出て来た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はては衣服を脱棄てて、なまめかしき乳も唇より流るる血汐ちしおみらしつつ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
原にはほこりと見まぎらわぬほどに、灰が白くかかって、畑の桑は洪水にでもひたされたあとのように、葉が泥みれになって、重苦しく俯向いている、車中の土地の人は、あれがきのう降った焼岳の灰で
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)