つぶや)” の例文
ふなべりに触れてつぶやくやうに動揺する波の音、是方こちらで思つたやうに聞える眠たい櫓のひゞき——あゝ静かな水の上だ。荒寥くわうれうとした岸の楊柳やなぎもところ/″\。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あるきながら、自分じぶん今日けふみづから進んで、自分の運命の半分はんぶんを破壊したのも同じ事だと、心のうちにつぶやいだ。今迄はちゝあによめを相手に、好い加減な間隔かんかくを取つて、柔らかに自我をとほしてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
役所や会社においても執務しつむ時間に、つくえの前にこしかけるだけは誰も同様であるが、実際仕事をさばくについても、ぶつぶつつぶやきながらすると、快活にやるとは仕事の分量においてちがいはなくとも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
頭髪かみのけ垢染あかじみて肌色の分らぬ程黒くなった顔に垂れ下って、肩の破れた衣物きものを着て、縄の帯を占めて裸跣はだしで、口の中で何をかつぶやきながら、何処いずこともなく歩き廻り、外に遊んでいる子供を驚かした。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
つぶやかるる心苦しさ。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
歩きながら、自分は今日、自ら進んで、自分の運命の半分を破壊したのも同じ事だと、心のうちにつぶやいた。今までは父や嫂を相手に、好い加減な間隔を取って、柔らかに自我を通して来た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
苦々しいつぶやきを口の内でらす事がよくあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)