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同船
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どうせん
『
同船許す、みんな
乘れ。』と、
天滿與力に
舟から
引きおろされた
百姓町人の
群に
向つて
聲をかけた。
不思議なる
縁につながれて、
三人は
日本へ
皈らんと、
弦月丸に
同船した
事、
出帆前、
亞尼といへる
御幣擔ぎの
伊太利の
老女が、
船の
出帆が
魔の
日魔の
刻に
當るとて、
切に
其夜の
出發を
止めた
事。
『
百姓乘れ、
町人乘れ、
同船許す。』と、
手招きした。
天滿與力がすご/\と
船から
出るのに、ざまア
見ろと
言はぬばかりの
樣子で
摺れちがつて、
百姓町人はどや/\と
舟に
乘つて
來た。
『
上れ、
上れ。
百姓町人、
同船ならん。』と、
居丈高になつた。