口入くちいれ)” の例文
手紙で知らして来た容子にると、その後も続いて沼南の世話になっていたらしく、中国辺の新聞記者となったのも沼南の口入くちいれなら
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
橋を越して合羽かっぱ橋へ出て、頼んでおいた口入くちいれ所へ行く。稲毛の旅館の女中と、浅草の牛屋の女中の口が一番私にはむいている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
弥吉は、部屋へかえると、通しをかけてあった大隅への奉公口の返事を、口入くちいれ業のある町家まちやをさして出かけて聞きに行った。どうせ浮いた髪結業だ。
お小姓児太郎 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お手廻りのお世話をさせるために、江戸でお召抱えになったのがそのお藤さんで、当時はそんな邸向の奉公人ばかりを口入くちいれする請宿うけやどがあったのだそうです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
きずは薩州やしき口入くちいれで近衛家の御殿医ごてんゐが来てつた。在所の者は朗然和上の災難を小気味こきみよい事に言つて、奥方の難産と併せてぬまぬしや先住やの祟りだと噂した。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
今年十八で器量はよし柔和ではあり、恩人織江の口入くちいれでありますから、早速其の者を召抱えて使いました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まず自分の子が出来る前からして神下かみおろしの所に行って賄賂を遣って置くです。そうしてどこか良い寺へその子供をあるラマの化身だというて口入くちいれをして貰うのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
お島が今の養家へ貰われて来たのは、渡場わたしばでその時行逢った父親の知合の男の口入くちいれであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これは口入くちいれの婆あさんが、こん度越して来た家の窓から、指さしをして教えてくれたのである。見れば、なる程立派なかまえで、高い土塀の外廻に、殺竹そぎだけななめに打ち附けてある。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
この養子に契約した者も将軍より一字を貰って、細川六郎澄元すみもとと名乗った。つまり澄元の方は内〻の者が約束した養子で、澄之の方は立派な人〻の口入くちいれで出来た養子であったのである。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かへ其後そのご平右衞門へいゑもん口入くちいれにて相方さうはう相談さうだん調とゝの吉日きちにちえらみて五百りやう持參金ぢさんきんをなし又七を彼の白子屋しろこや聟養子むこやうしとぞなしたりけり此事はもとよりお熊の不承知ふしようちなるを種々いろ/\ときすゝあとかくまづ當分たうぶんその五百兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
雇人口入くちいれ業という札が出ていて、いつも人が集っているのでした。引手をする女は五十くらいだったでしょうか。額の抜け上った、小形のせた女でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
何々というはズボラで通ってる門生で、原稿引当ての前借を紅葉が口入くちいれしたものらしい。
どこへ行く当もない。正反対の電車に乗ってしまった私は、寒い上野にしょんぼり自分の影をふんで降りた。狂人じみた口入くちいれ屋の高い広告燈が、難破船の信号みたように風にゆれていた。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
尋ねるうちさいはひ小川町にて其頃評判の御殿醫てんい武田長生院方たけだちやうせいゐんかたに人の入用ありときゝ口入くちいれの者に頼みて此處ここに住込ける此長生院と申は老年としばえいひことに名醫のきこえあれば大流行おほはやりにて毎日々々公私こうしの使ひ引も切らず藥取の者其外門前にいち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
聞出し早速さつそく同人方へ到り掛合樣此度聖護院しやうごゐんみや御配下天一坊樣御上京につき拙者せつしや御旅館展檢てんけんため上京し所々聞合せしに貴所方きしよかた明店然るべしと申事なり何卒なにとぞ御上京御逗留中ごたうりうちう借用致し度との旨なりしが四郎右衞門は異儀なく承知しようちしければ同人の口入くちいれにて直樣金銀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)