そし)” の例文
かたいからせ炯々けいけいと眼を光らせた子路の姿が遠くから見え出すと、人々は孔子をそしる口をつぐむようになった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
榛軒は先づ桂川桂嶼と所見を同じうして、晩出蘭学者の飜訳書に由つて彼邦医方の一隅を窺ひ、膚浅ふせん粗漏を免れざるをそしつた。しかし榛軒のことは此に止まらない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
東のは迂闊漢をそしりて骨に入り、西のは一切世界唯心所造の理を片言に道破せり。共におもしろし。
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
賞めるといふことが、そしるといふことと同じであるやうな場合を私はよく見出す……。
批評 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
想ふに茶山は鵬斎死期の近かるべきを聞いてゐて、妙々奇談中鵬斎をそしる段を読み、「気之毒」の情は一層の深きを加へたことであらう。譏刺きし立言者りつげんしやの免れざる所である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
京水がそしってあるのを見ては、忌憚きたんなきの甚だしきだと感じ、晋が養父の賞美の語をして、一の抑損の句をもけぬのを見ては、簡傲かんごうもまた甚だしいと感ずることを禁じ得ない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)