会話はなし)” の例文
旧字:會話
会話はなしの仲間へはいり、暇を潰そうと声をしるべに尋ねて行ったところ、広い部屋へ出た。酒肴が出ておる。悪くないなと思ったぞ。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お浪との会話はなしをいいほどのところにさえぎり、余り帰宅かえりが遅くなってはまた叱られるからという口実のもとに、酒店さかやへと急いで酒を買い
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
真面目まじめ会話はなしをしている時に、子供心にも、きつねにつままれたのではないかと、ふと、老媼おばあさんをあきれて見詰めることがあった。
少し馴染が重なつて来ると、寡婦ごけさんは時々妙な事をし出した。それは会話はなしの途中で一寸中野氏の耳を引張る事なのだ。
甘き夏の夜の風を、四人は甚麽どんなうれしんだらう! 久子の兄とアノ人との会話はなしが、解らぬ乍らに甚麽に面白かつたらう!
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
見慣れない坊さまの訪客に、ちょっと驚いたようだったが、柘植の家のことで来たと聞くと、あわてて一空さまを上座にすえて、会話はなしにかかった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
君江はうなずいたまま窓の外へ目を移したので、会話はなしはそのまま杜絶とだえる間もなく車は神楽阪の下に停った。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
米友は、大戸の入口から洩れて来るこれらの会話はなしをよく聞いていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
恰度ちょうどそこへ、広海屋が、家人の寝しずまった頃を見はからって、嘲弄ちょうろうにまいったところ——二人の会話はなしを立ち聴けば、いやもう、汚れはてた、浅ましいことばかり——ことさら、長崎表の昔が
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
黄金丸は呵々かやかやと打ち笑ひて、「さな恨みそ。今日は朱目あかめぬしに引止められて、思はず会話はなしに時を移し、かくは帰着かえりおくれしなり。構へて待たせし心ならねば……」ト、ぶるに鷲郎も深くはとがめず
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
道行めいた気分がすっかり二人をしんみりさせて、どっちからともなく、気軽に、歩きながらの会話はなしになった。
寛永相合傘 (新字新仮名) / 林不忘(著)
会話はなしれると、浪の音が急に高くなる。楠野君は俄かに思出したと云ツた様に、一寸時計を出して見たが
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何事か面白相に語らい行くに我もお辰と会話はなし仕度したくなって心なく一間いっけんばかもどりしを、おろかなりと悟って半町歩めば我しらずまよいに三間もどり、十足とあしあるけば四足よあし戻りて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お柳と西条様との会話はなしを聞いていたのでしたが、西条様が立ち去るやすぐに私は、自分の家の裏口から台所へはいって行き、持田家の秘密を探らせるために、持田家へ
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたしにはまたちょいとこの会話はなしが分らなくなる。牛乳ちちましてくれるうちかどに来た。
寺子屋としての日課が終ってからでも、この校庭が遊び場所になるのは毎日のことのようなものですが、今日は、お松が特別に注意を向けさせられたのは、子供たちの無意識な会話はなしぶりでありました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いうことになったのでありまして、さてそれからは、私とお柳との会話はなしになるのでございます。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、うっとりした眼をそばの泰軒へ向けると、会話はなしのないのにあいたのか、いつのまにやらごろりと横になった蒲生泰軒、徳利に頭をのせてはや軽い寝息を聞かせている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これは同じ長屋のお神の一人が見て、現に会話はなしを交したというのだから間違いはあるまい。
こういう会話はなしの話されているのは岩石ヶ城内白虎城砦びゃっこやぐらのオースチン老師の居間であった。時は五月の末であって、オースチン老師の一行がこの城内へ捕われてから一月の日が経っていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あせりだした栄三郎、群刀をすかしてその背後をのぞめば、鞘ぐるみのかたなを杖に、しずかに会話はなしつつ観戦のていとしゃれている二人の人かげ——月輪軍之助と丹下左膳である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すぐに茅野雄の耳についたのは、二人の変わった会話はなしであった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お久美は、きのうの良人との会話はなしを思い出して、足が自然に、池之端仲町の伏見屋へ向くに任せていた。好きな芝居の絵でも見たら、こころもちがぱっとするだろうというのだった。
あの顔 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また奉行の忠相と、相対ずくで会話はなしのできるのも、この木場の老人だけだった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
うす陽の当たる縁で、お高はよくおせい様と会話はなしをした。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「先ほどからのわたしどもの会話はなし耳にはいりましたか」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
で、大迫が、また喬之助を会話はなしへ持ち出して来て
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)