仰言おっしゃ)” の例文
……けれども貴下あなたは、そんな事は仰言おっしゃらぬでしょう。……ああ……本当にして下さる。信じて下さる、……ありがとう。ありがとう。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
妾にも解らないのでございますよ。ある日父上にはこう仰言おっしゃって、無理矢理に一家を引きまとめてこの土地へ参ったまででございます。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああ、虹とは……。貴方は何を仰言おっしゃるのです」伸子は突然弾ね上げたように身体を起して、涙でうるんだ美しい眼を法水に向けた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
貴方はせっかく会って下さって何も仰言おっしゃらなかったのね、妾も何も言わなかったけれど。だって何も言うことがないのですもの。
……あ! 何故なぜ仰言おっしゃつたの? だつて、いち番手近かなモデルぢやありませんこと? それに私は自分のからだが憎らしかつたのです。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
誰でも良くやる指先で、こんな字ですと畳の上などに書きますと、後を手で消す真似をしておかないといかんと仰言おっしゃるのです。
泉鏡花先生のこと (新字新仮名) / 小村雪岱(著)
『何にそう見えているか』と仰言おっしゃるから、『往生要集の中に見えてございます』と申すと、聖が「わしも往生要集の中は見たぞ」と仰言る。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仰言おっしゃいましたわね。品が良いとか、悪いとか、御自分は何ですか。あなたは歌川さんのオメカケとできた人じゃありませんか。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「ええ、でも木曾さんにまでそう仰言おっしゃられると、なんだかこう、身動きも出来ないものを背負わされたような気がしますわ」
宇宙爆撃 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
お父様お母様には、到底私から書く言葉がありませんから、どうぞこの手紙を御覧に入れて、貴方からくれぐれもお詫びを、仰言おっしゃって下さい。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
もちゃげるわけじゃありません、こりゃア、どうも凄いお推察みこみ、恐れ入りました。……仰言おっしゃる通り、如何にもそうでなくっちゃ筋が通らねえ。
『まさか、あなたが、国際裸体婦人同盟員である一方、その、命知らずな「黄色い嘴ベッコ・ジャロ」の論説部員なのだと、仰言おっしゃるのではないでしょうね。』
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
それにあたしにお嫁入の話なんか仰言おっしゃって、あたしが冗談にしてしまうことだって、これでたいていのことじゃないことよ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
少女「それからねえ先生、あんまり真似まねをするからお兄さんがだれだって仰言おっしゃると、向うでも誰だって言いましてよ」
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
お父さんは何にも仰言おっしゃらないし、お母さんはあの通り何にも分らないんでしょう。それにお医者様はいつもいいいいと云ったきりで帰ってゆかれるのよ。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
頂いて来て呉れろと仰言おっしゃいますので…………ほんとうに御無理なお願いで済みませんが…………坊ちゃまのお母さまもお願いして来るように仰言いますので…………
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
仰言おっしゃって下さい。傷は重うございます。これが最期になるかも知れません。本当のことをひと言だけ聞かせて下さいまし。あなたは真沙の良人でございましょう——」
柘榴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
どうぞ、ゆめにでもお現れになりお健やかなお言葉を仰言おっしゃってくださいませ、それでなかったら筒井はどう考えていいかさえ、もう、分らなくなっているのでございます。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お師匠さんの仰言おっしゃる通り、じっとこらえて、いざと言う場合まで、自分の力を養って行く他はないのだ。気をたかぶらせてはならぬ。女の子のように、めそめそしてはならぬ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
何卒おついでの節よろしく、また何かいゝものが有りましたら頂かして下さいますよう仰言おっしゃつて下さいまし、こちらもまだなか/\あつうございます 東京もおあついでせうね。——
消息 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
真紀 此の間お師匠さんにお目にかかったら、何て仰言おっしゃったと思う? あなた。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
斯う仰言おっしゃって、さっと御座をお立ち遊ばした時のあの御姿の神々しさ、私などはほんとうに有難涙にくれたものでございました。多くの方々もあっと云って感服致したものでございます。
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
「あの、署の方と仰言おっしゃいますと——刑事さんで、まあ、このお暑いのに——」
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
二度も罹災りさいする前に、もっと早く故郷へ行っておればよかったのにと仰言おっしゃるお方もあるかも知れないが、私は、どうも、二十代に於いて肉親たちのつらよごしの行為をさまざまして来たので
(新字新仮名) / 太宰治(著)
死ねと仰言おっしゃられるのでしょうか、かあいそうなうちの人、——尾羽うち枯したあわれな姿で帰って来て、ひと言、駄目であった、と、おやかたさまにご報告申しあげ、辿たどりついた我が家にうち倒れ
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「あはははは、そこまで仰言おっしゃっては——両方でござる。両方でござる」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いいえ奥様、貴女は夜もおちおち眠れないと仰言おっしゃいましたが、それは然しただ眠れないだけのことでしょう。然し私共は一日一日が生きて行けるか、行けないかのことなんです。命がけのことなんです。」
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「先生。そんなことは、もう仰言おっしゃらずにいて下さい」
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
“貴族だ”と御自分で仰言おっしゃるように上品な風采ふうさい
仰言おっしゃるのは、暮し方の心掛けですか。
女性の生活態度 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
母親 とんだことを仰言おっしゃいます。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
黄からくれないに——そうすると、それが黄橙色オレンジになるではございませんか。黄橙色オレンジ——ああ、あのブラッド洋橙オレンジのことを仰言おっしゃるのでしょう。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「だって、お互いの気持ちさえ光風霽月ならベッドが並んでたってかまわないじゃないこと? そう仰言おっしゃったじゃないの昨日きのう
謎の女 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「ホホホ。つまりエチオピアへお出でになりたいからダイナマイトをくれって仰言おっしゃるんですね。おやすい御用ですわ。ホホホ」
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ありがとう……、そういって下さるとやっと私にも自信がついて来ましたよ、仰言おっしゃる通り議論よりかモノですからね……」
火星の魔術師 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「もう殺生だけはやめて下さいよ。この子が生れたら、おやめになると、あれほど固く仰言おっしゃったのに、それにまた——」
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「源内先生、あなたはひどく見透したようなことを仰言おっしゃいますが、今も言ったように、四人がちゃんと里春の声を……」
今までだって何にも隠さなかったでしょう。だからききたいことがあったら何でも私にそう仰言おっしゃい、ね。ひとつのことを種々な人から聞くのはいけないよ。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それを仰言おっしゃっていただけませんか。案外そんな漠然たるカンがものの急所を射ぬいていることが多いものです」
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「故上人は念仏は様なきを様とす。唯ひたすら仏の言葉を信じて念仏をすれば往生をするのだ。と仰言おっしゃって全く三心のことなどを云われたことはありません」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まあ汚いだねえ」と仰言おっしゃって、母様はあなたの生傷のついてる真黒まっくろな膝を洗っておやりになった。そして綺麗きれいになったところで、いつでもこう言いなさる。
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
頂いて来て呉れろと仰言おっしゃいますので…………ほんたうに御無理なお願ひで済みませんが…………坊ちやまのお母さまもお願ひして来るように仰言いますので…………
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
もし強いて脱ぐと仰言おっしゃるんでしたら、私とこの名前は知りませんが、私の同室者は、きっと、私達の大嫌いな徳律の命令に服従して、寝台車掌コントロルウを呼んで、あなたを
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「と、申しますと何者かが、あの品物を隠して持っている——と、このように仰言おっしゃいますので?」
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
阿母さまもそう仰言おっしゃってだけえ、結婚式は、どねえにでも派手にしろ! その分だけは、阿母さまも用意していられたけえ、おめえの肩身の狭くなえように心置きなくやれ
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
さうして何卒自分を許して明日から学校に出てくれ、たのむと先生は手をつかないばかりに仰言おっしゃひますので私も出る気になりましたけれどもう学校は決して楽しい処ではなくなりました。
「こんな場合に、身の上調べは恐れ入りますね。お前さんも、立派なお武家——一旦いったん、あっしを、見逃そうと仰言おっしゃった以上は、もう綺麗きれいさっぱりといざこざなしに、放してやっておくんなさい」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
どなたがなんと仰言おっしゃったとて決して決して夢ではございませぬ。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「みんなその方々を、一てえどうしようと仰言おっしゃるんで?」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「失礼だが、その——何と仰言おっしゃられる名前でしたかな」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)