人気勢ひとけはい)” の例文
旧字:人氣勢
時計の音が一分ずつ柱を刻んで、うしお退くように鉄瓶のひびき、心着けば人気勢ひとけはいがしないのである。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
障子の外には人気勢ひとけはいして、くすくす笑い、三太夫は大粒の涙ほろほろ、刀をからりと投棄てて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かさねを透いた空色のの色ばかり、すっきりして、黄昏たそがれうすものはさながら幻。そう云う自分はと云うと、まるで裾から煙のようです。途端に横手の縁を、すっと通った人気勢ひとけはいがある。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
およそ十四五人の同勢で、女交りに騒いだのが、今しがた按摩が影を見せた時分から、大河おおかわしおに引かれたらしく、ひとしきり人気勢ひとけはいが、遠くへ裾拡がりにぼう退いて、しんとした。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今境内は人気勢ひとけはいもせぬ時、その井戸の片隅、分けても暗い中に、あたかも水から引上げられたていに、しょんぼり立った影法師が、本堂の正面に二三本燃え残った蝋燭ろうそくの、横曇りした
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その人たちを、ここにあるもののように、あらぬ跫音を考えて、しわぶきを聞く耳には、人気勢ひとけはいのない二階から、手燭して、するすると壇を下りた二人の姿を、さまで可恐おそろしいとは思わなかった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
泉殿せんでんなぞらへた、飛々とびとびちんいずれかに、邯鄲かんたんの石の手水鉢ちょうずばち、名品、と教へられたが、水の音よりせみの声。で、勝手に通抜とおりぬけの出来る茶屋は、昼寝のなかばらしい。の座敷も寂寞ひっそりして人気勢ひとけはいもなかつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
泉殿せんでんなぞらえた、飛々とびとびちんのいずれかに、邯鄲かんたんの石の手水鉢ちょうずばち、名品、と教えられたが、水の音より蝉の声。で、勝手に通抜けの出来る茶屋は、昼寝の半ばらしい。どの座敷も寂寞ひっそりして人気勢ひとけはいもなかった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おなじおもいが胸を打った。同時であった、——人気勢ひとけはいがした。——
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
註に及ばず、昼間は人気勢ひとけはいもあるのでない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
トタンに人気勢ひとけはいがした。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)